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それから2日経ったが
彼女の体調は良好とはいえない
胃に物を入れることができず、食事を口にしても
吐き気を伴っているようだった
熱があるわけではない、むしろ低いぐらいで
触れるたびに、不安になる

「また食べなかったと聞きましたよ」

『食べなかったじゃなくて、食べれないの』

大人しく部屋にいる明翠に声かければ
覇気のない答えが返ってきた

「吐き気の理由は、わかってるんですか?」

『・・・・・・・・・・・・』

言いたくなさそうに視線を逸らし、眉間に皺を寄せる
もう何度も見た
この繰り返しだ
一向に口を割らない

4年の間に感じた何かしらが、そうさせることはわかるが
このまま食べずにいるわけにも行かない
これ以上続くのなら、また病院に逆戻りになる

「何か、食べたいものがあれば持ってきますよ」

『何も食べたくない』

「・・・それでは、埒があかない、無理にでも食べてください」

『いらない』

ため息を吐かずにはいられない
好物ならどうかと提案するも
そう言う問題じゃないと即答だった
本人もイラついているのだろう
きつい言い方に傷つくほど柔ではないが
おそらく物言いに後悔してか
しゅんとする彼女の方がダメージは大きそうだ

やはり病院に戻すべきだろうか・・・




また2日経った
その間に、1度病院で検査を行い
点滴も打ったと聞いた
同行したいところだが立場上難しい
仕事をおざなりにして彼女に構うことができない
4年前とは違う

彼女が起きてからの数日
なにかと騒がしく感じるのは気のせいではないはずだ
強い妖気に感化されているのかもしれない

『的場』

「はい?」

『外、出てもいい?』

「いいわけないでしょう?」

『・・・・・』

「そんな顔しても許しませんよ」

『わかったわ、じゃぁ勝手にします』

「そんなことさせるわけないでしょう?」

布団から抜け出した明翠の手を引けば
きっとこちらを睨みつけた

「そんな状態で外に行けば、危険なことくらいわかるでしょう」

『雪がいる』

「そうだとしても」

『・・・・』

ふいっと顔をそむけ、窓の外へ視線を向けた
大きな気配が動くのを感じ、深くため息を吐いた

「どこに行きたいんですか」

『いいの?』

「私も行きます」

『・・・・うん、ありがとう。的場』

「雪に邸を壊されたくありませんからね」

着替えるからと部屋から追い出され
仕方なしに廊下で待つ
目を離したうちに勝手に抜け出すのではと思ったが
同じ扉から支度を終えた彼女を見て安心した

『私、セーラー着るから。今度、的場も学ラン着てよ』

「嫌ですよ」

『22歳なら大丈夫』

「大丈夫じゃありません。そんな馬鹿な真似したくありません
 まぁ、明翠のセーラー服は取ってあるので言ってくれれば出してきます」

『・・・・・・的場』

「何ですか?」

『変態みたい』

「・・・失礼ですね」

こうして話しいていると元気そうに見える
見えるだけだ
まただ、何も変わっていない
この4年間を考えないなんてこと、できるはずがない
それだけの感情を塞ぐなんてことをすれば
今度こそ彼女自身が壊れてしまう

「明翠」

『何?』

「話なら私が、聞きますから・・・1人で無理をするのはやめなさい」

『・・・・・・・』

足を止めた彼女を振り返れば
ぼうっとこちらを見ていた
どうかしたのかと声をかければ
やっぱり帰ると来た道を戻り始めた


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