ユースとベルドリトが喧嘩した。

いつもは兄妹以上に仲の良い2人だったが、

「喧嘩の原因は?」
「ベルくんに聞いて!」
「ユースちゃんに聞けば!」

随分派手な喧嘩なようだ。

何故かイェスパーを間を持つ事態になっていた。が、8割程は失敗しているようだ。

ユースとベルドリトは2人ともそっぽを向いて、顔をあわせようともしていない。
あわせようとはしていないが、2人とも実は同じ長椅子に座って背中合わせをしている。

喧嘩中でも普段からの仲のよさが出ているようだ。

イェスパーも溜め息。

「ユース、ベルドリト、喧嘩はよくない。仲直りしなさい」
「やだもん。仲直りしないっ」
「ユースちゃんが悪いんだから」
「ベルくんだって酷かったよ!」
「落ち着きなさい」

どうしたものか。

2人で喧嘩しているだけならイェスパーも放っておくのだが、どちらかというとユースの保護者達が怖い。

親バカな大賢者いわく、
『ユースが泣くようなことがあれば、我が黙っていない』だそうで。

そしてイェスパーの敬愛するモルディーンいわく、
『今後に支障が出ても困るし、仲直りしてね』だそうで。

保護者達はあくまで笑顔だったが、怖いことこの上ない。

イェスパーはユースとベルドリトの前に座りながら、2人を観察。

どうしたものか。

「……とにかくベルドリト、お前年上だぞ」
「ラキ家に妥協と怯懦など皆無。でしょ?」
「こんなところで家訓を使うな」

頬を膨らましたベルドリト。その時ユースが振り返って膨らんだベルドリトの頬を指で押した。ぷく。

「何するのさ、ユースちゃん」
「ベルくん、子供っぽい」
「そーゆーこと言う? ユースちゃん」
「ベルくん、可愛いなぁ」
「ユースちゃんのが可愛いよ」
「ほんと? 嬉しいな」

「………仲直りしたか?」
「うん」
「うん!」

いつの間にか2人は並んで仲良さそうに笑っている。
イェスパーは先程とは違う意味の溜め息をついた。

「結局は仲がいいんだな」
「ベルくん、優しいもん」
「ユースちゃんがスキだもん」
「私もスキぃー」
「なんなんだ、お前ら」

そしてユースとベルドリトが可愛いらしく首を傾げて、イェスパーを見ていた。

「「ラキ家に妥協と怯懦など皆無。友人関係でも妥協も怯懦なんかしないんだから」」
「わぁお、にょるっとハモった!」
「わーいっ」
「全く…、仲良くしてなさい」

3度目の溜め息をついたイェスパーが優しくユースとベルドリトの頭を撫でていた。


(ラキ家に妥協と怯懦など皆無)

結局喧嘩の原因は何だったのだろう


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