「……バロメロオさん、ですよね」
初めて会った時は不安げな瞳を浮かべ、何かから怯えていた。
ヨーカーンに拾われたと聞いたが、全く大丈夫なのだろうか。
†††
「バロメロオ様、お久しぶりです…」
久しぶりに会った時は少し元気が戻っていた。
話に聞くと、父に会えたと笑っていた。
父がいるのに未だ皇都に残る必要を問うと、父とは一緒に住めないからと寂しく笑った。
†††
「――――」
以前から数週間後、ユースに会ったが、彼女は放心状態だった。
話によると父が殺されたのだという。
何処を目指すのかわからない彼女に不安を抱く。
†††
「バロメロオ様ー! お元気でしたか?」
だが、また数週間後、彼女にはまた笑顔が戻っていた。
今はエリダナに住んでいるのだという。
十二翼将や猊下に会える機会が少なくなった。
それでもベルドリトの兄であるイェスパーと連絡はとれている事が嬉しいらしい。
だが、彼女が時々鋭く笑う気がした。
また心配事が1つ増える。
†††
「軍神様、一緒にお散歩行きませんか?」
今、彼女は私を軍神様と呼ぶ。
それがヨーカーンを「大賢者様」と呼ぶことから、敬意の表しだと知った。
まだ少女らしい迷いがあるが、ユースは随分と強くなった。
可愛らしく、だが美しく。
その童顔はコロコロと表情を変え、飽きない。
脆く儚いユースを守るためには、私もこの車椅子の軛から立ち上がろう。
「ユース!」
ユースが私を散歩に誘うと周りは全て怒りだす。
いくら私でもユースには手を出さない。………と思う。
ヨーカーンに手を引かれて連れていかれたユースを見ながら、はぁと溜め息をつく。
名残惜しそうに振り返るユースは前とは随分違う。
会ったその日から、変わり続けていたユース。
これから少女から女性に変わってしまうのだろう。
なんとも惜しい事だが、ユースだけはそれでもいいと思う。
ユースが女性に変わってしまう時にはこの軛も錆び付いてしまえばいい。
私が動き出すくらいの事がユースに起こらなければいい。
やっぱり私達はユースに甘い。
(車椅子の軛)
軛って何ですか? 軍神様
………車椅子のこの辺りだ