6話。コカイン

どこにでもいるロビーくんは散歩先であるショッピングセンターにも現れます。
ロビーくんに対して嫌悪感を募る夢主に対して、三角様は彼女をあやすように触れ、ロビーくんはそんな三角様を咎めます。

夢主の存在ですが、彼女は罪人判定を受けた元彼に引きずられて迷い込んできた人間であり、通常であればその場にいた三角様、もしくは裏世界の住民達に殺されてあっさり終わる筈でした。
今までに迷い込んできた罪人判定を受けていないただの人間は全てそうやって殺されてきたのですから。
ですが、この夢主は運よく生き延び、運よく三角様に気に入られて、運よく暮らし続けています。夢主はあくまでイレギュラーな存在です。

ロビーくんはイレギュラーな夢主をレギュラーな存在にするためには、通常通りに殺すか、もしくは殺せないのであれば現実世界に逃がした方がいいのでは?と考えています。
ですが、ロビーくんは三角様が夢主のことを特別気に入り、そのどちらも出来ないであろうことに気が付きました。

三角様自身もこのまま夢主を存在させ続けていいのかどうかはわかっていません。
罪人判定を受けてはいないので裁かなくても良い、というのはありますが、ただの人間をこのまま生活させていいかどうかの判断は三角様がつけられてるものではありません。
ですが、三角様はもうすでに夢主を手放すのは惜しいと思い始めていました。
だからこそ自分自身もわかっていることを、よりにもよって口煩いロビーくんに指摘されたことが余計に腹立たしく感じて、ロビーくんの方を排除します。
三角様の対話方法が圧倒的な暴力でしかないのは、彼が彼である以上、止められないことです。


7話。テオフィリン

三角様は裏世界に入る前に夢主のためにバリケードを築いて彼女を残していきます。
裏世界と表世界を切り替えるサイレンの音ですが、この世界では不定期に鳴り響いています。間隔が数分間だったりと、あまりにも短いことはないでしょうが、ある一定の長さ以上を保った後で鳴り響きます。
住民達はサイレンが鳴る前の予兆のようなものを感じ取ることが出来ます。それは長く暮らしているからこそ得られたものであり、夢主もこのまま長いこと暮らせれば察することが出来るようになるでしょう。

赤と黒の三角様。
何度か映画版に引っ張られているという設定が出てきますが、映画版が本当に好きなんですよ、わたし。という訳で映画版黒い三角様も登場させてしまいました。わたしの力不足で書き分けが大変になった瞬間です。読みづらさも一際だったと思いますが、ここで謝罪を申し上げておきます。すみません。

赤と黒の三角様達は同じ種族であることに間違いありません。ですが、黒い三角様の方が大きさも力も勝っていることにしてしまいました。
赤い三角様は罪人を裁き、住民達の守護を主としていますが、黒い三角様は教団員の排除に全振りしています。

少し前にも書きましたが、教団はサイレントヒルの『表(裏)世界』から出られなくなった人間達です。
彼らは自分達が暮らしていた現実世界に帰るために、自分達以外の異形の存在を、燃やす事によって浄化させ、全てを浄化した時に帰ることが出来ると信じています。
途方もなく、そして無理な話でありますが、彼らはそれらを真剣に、狂気的なまでに信じています。
よって、教団員の中には他よりも少し戦闘力に優れた人間達が混ざっています。そして無差別にサイレントヒルの住民達を狩り、燃やしています。
そしてそれを阻止するために存在しているのが黒い三角様となります。

さて、黒い三角様が夢主を見つけます。何度も書いてしまいますが、夢主はイレギュラーな存在です。
黒い三角様もただの人間がその辺を彷徨っているとは思ってはいませんでした。夢主を教団員だと勘違いした黒い三角様は、夢主を殺害しようと行動し始めます。
間一髪、間に合った赤い三角様が夢主を守るために黒い三角様と対峙します。
この時、ロビーくんが訪れて夢主に近付きますが、まだ殺意はありません。ですが、赤い三角様の方が先に牽制も含めて大鉈を投げてロビーくんの片腕を切り落とします。普段の行いのせいです。

そして、病室に戻ってこない夢主を心配したナースも彼女を探しに訪れます。
ナースは疑問を抱く夢主に対して「私達の創造主は一緒」と書き示しました。

この世界の元としてはサイレントヒル2のIn waterエンド後だと想定しています。
赤い三角様やナース達は簡潔に言えばジェイムズから派生して生まれました。
その後、ジェイムズがいなくなったあとも、サイレントヒルの町の力が続き、様々な異形達が増えていった、という設定になります。
厳密にいえばロビーくん等はジェイムズとは関係ない存在になりますが、それらもサイレントヒルの町の力によって後から動き出したということにしています。
兄弟や親族という訳では決してありませんが、全ての大元はジェイムズであり、異形の住民達は全て派生となります。
その中でも赤い三角様は最初の方に生まれました。赤い三角様が住民達を保護下においているのはあくまで成り行きではありますが、必然でもあります。


8話。クロロホルム

夢主がサイレントヒルに訪れてから数日が経過しています。
そしてその期間、裏世界に来るたびに赤い三角様は出来るだけ夢主の傍にいるようにしていました。
ですが、この時の三角様は町に訪れた罪人を裁きに行くために夢主から離れていました。

夢主の護衛に訪れていた黒い三角様の方ですが、以前、夢主を襲った経緯もあり保護に来ていました。
赤から黒の三角様に対してはただの同僚程度にしか考えていませんが、黒から赤の三角様に対しては家族のように思っています。
そんな赤い三角様が興味を示している存在ということで、黒い三角様はだいぶワクワクしながら夢主の様子を伺っています。

そして様子を伺っている間、ロビーくんが訪れたこともあって夢主は憂い顔のままです。
最初、黒い三角様は夢主自身も望んでこの世界に居るのだと思っていました。ですが、それが思い違いだということに気付き、赤い三角様がいないうちに夢主を現実世界に戻そうと考えなおします。
相思相愛で夢主も望んでこの世界に居たいと思っているならオールオッケーで見守っていく方針の黒い三角様でしたが、そうでないのであれば話は別です。
家族だと思っているからこそ、いずれは必ず死ぬ存在である夢主と、サイレントヒルにいる限り永久に生きる赤い三角様とは一緒に居させられない、という思考故の行動です。触れあった時間が短い程、傷は浅い、との判断でした。

黒い三角様が言葉を持っていたとしたならば、夢主は大人しく従い、黒い三角様に連れられてそのまま帰れたかもしれません。
ですが、実際には黒い三角様は言葉を持っていませんし、彼の行動に夢主は恐怖を抱きます。
そして、黒い三角様が夢主を連れ出す前に、赤い三角様が間に合いました。
この時点で、夢主は自身の味方は赤い三角様しかいないのだと思ってしまいます。

黒い三角様も、目の前に赤い三角様が居るのであれば、夢主を連れ出すことは不可能だと気付いていますし、赤い三角様に対して助けを求めている夢主を見て、逡巡した後に彼女をここに居させることにします。

夢主を取り戻した赤い三角様は、最早夢主をどこへも帰す気がありません。
それは夢主が自身に助けを求めたというのも強く関係しています。保護下に置こうと思った存在が、助けを求めたのであれば、あとは赤い三角様もただひたすらに彼女を守り通すだけです。

本当は夢主を現実世界に帰そうとしていた黒い三角様を拒絶することなり、そして決して夢主を手放す気が無くなった赤い三角様に囚われた夢主を見て、ロビーくんは憐みの言葉をかけます。
そして、ロビーくんが余計なことを夢主に語る前に、赤い三角様はロビーくんを排除します。
ロビーくんを拒絶していた夢主は、その行動すらも赤い三角様が自身を守ってくれている行動故だと思ったでしょう。


9話。クロキサゾラム

以前の騒動以降、黒い三角様は夢主の生存確認のために時折顔を出しています。
それは本当にただの生存確認で、すぐに死ぬであろう人間の夢主が生きているかの確認であり、もし死んでいた場合、赤い三角様が落ち込んでいないかどうかの確認です。
あとはついでに2人の進展も気になっている彼は、赤い三角様に夢主との様子を聞きこんでいますが、毎回赤い三角様に問答無用で追い返されています。
黒い三角様は面白半分ですし、赤い三角様は心底疎ましく思っているでしょう。

さて、夢主の方もだいぶサイレントヒルの世界に侵食されてきています。血錆は殆ど見慣れてきていますし、ナース達との親交も深めています。
そして車椅子という移動手段を、逃げるためではなく、三角様に近付くためのものとして考えています。
彼女の中からは既にサイレントヒルの町から出るという意識は薄れていますし、三角様に対しての信頼も愛着も湧いてきています。
ですが、三角様の方は未だに夢主が逃げるかもしれないと思い続けていました。物語が終わったあとの三角様だとしても、夢主が逃げ出してしまうことを考えているかもしれません。
そして、今の三角様はもう夢主が自身の元から離れることを決して許しはしないでしょう。

車椅子に乗っている夢主を見た瞬間、隣にいたナースが彼女に車椅子を渡したことを悟った三角様はナースの腕を切り落とします。
勝手に夢主が動けるようになるものを渡したナースに怒りを覚え、そして、勝手に動こうとした夢主にも怒りを感じています。
三角様から暴力性が抜けることは決してありません。ですが、三角様自身も怒りのままに夢主に触れれば夢主を殺してしまうことを知っています。
世界が裏世界から表世界に戻っていったのは夢主にとっても運が良い出来事でしたし、三角様にとっても幸運なことでした。
三角様は保護下に置くと決めた夢主を殺さずにすみました。

再び、三角様が夢主と出会った時、夢主は三角様が触れるのを拒絶しませんでした。
夢主は恐怖故に以前と同じであろうとしただけですが、それすらも三角様にとっては嬉しいことでした。

三角様は夢主を肩に乗せて歩くことに幸せを感じています。
頬を撫でた自身の手に擦り寄ってきた夢主に喜びを感じています。
落ちないように自身の頭に触れる夢主の手に愛おしさを感じています。
手放すことなど出来やしません。そしてそれにはもう夢主の意思すら関係ないのです。


10話。プレガバリン

夢主はメアリーの手紙を見つけます。ですがここは正確には三角様が夢主に手紙を見つけさせた場面になります。
In waterエンド後、だというのは書きましたが、ジェイムズはメアリーの手紙をレイクビューホテルの一室に置いて行ってしまっています。
三角様にとってはジェイムズもメアリーも彼を形成するうえでとても大切な人物達です。
メアリーの手紙をジェイムズの元に届けることは三角様の願いでもありました。
勿論、手紙の置き場所は知っていましたが、三角様は自分自身が触れることを躊躇い、ずっと同じ場所に放置されていました。
ですが、そこに夢主が現れます。夢主は罪人でもなく、教団員のように彷徨いこんできた人間でもなく、手には一切の穢れも血もありません。大切なメアリーの手紙を触れさせるのに相応しい存在でした。
そして、夢主は三角様に連れられトルーカ湖に向かい、無事、メアリーの手紙をジェイムズの元に届けることが出来たのです。

夢主はこの時点ではだいぶ恐怖が蔓延化し、感覚を鈍らせています。三角様に対する恐怖はいつの間にか殆どありません。三角様の傍が1番安全で、安心できる場所だとすら思っています。
三角様が怒りを見せたのが、彼から離れようとした時だけ、というのもあり、夢主の方ももう三角様から離れる気はありませんし、同時にサイレントヒルの町から出ることも考えていません。
そうして恐怖を抱かなくなった夢主からもやがて笑顔が増えてきます。
三角様が彼女を初めて気に掛けたのも笑みを零したからです。それも今は歪んでなどいない、自然な笑みを見せています。
三角様もより一層彼女を愛おしく感じるようになっています。


11話。Together Forever.

三角様の独白と、対面するロビーくん。
三角様とロビーくんは決して仲良しというわけではありませんが、敵対しているわけでもありません。
何度殺害してもキリがないロビーくんに飽き飽きしている三角様と、力で勝てる筈はないことを理解しているロビーくんは、会えばどちらかの暇が潰れるまで(大抵は三角様の大鉈が振るわれるまで)の間、お互い話し相手になっています。

三角様、ナース、その他異形の住民達は全て、意思疎通を取るのが得手不得手はそれぞれにありますが、お互いだけの通じる音のない言語を扱っています。お喋りなロビーくんも、彼らの言葉を聞くことが出来ます。

ロビーくんは一貫して夢主を殺すか現実世界に帰すかをした方が良いと思っています。あわよくば殺す方向をとって欲しいし、殺すのなら自分に任せてほしいとも思っています。
ですが、三角様の様子を見て、相変わらず殺すも逃がすもしないであろうことを悟っています。
三角様のその感情を熱狂的な愛情だと思っていましたし、そしてそれをどんな形であれ受け取った夢主も同罪だと思っています。
はいはい、お幸せにね。ロビーくんはそんな軽い気持ちです。ですが、夢主を手に掛けようとすることは諦めていません。だからこそ彼らは友人にはなれないままなのです。

三角様と夢主はいつまでも一緒にいます。三角様は異形の住民が故に夢主より永い時を生きるでしょうし、先に終わりを告げるのは必ず夢主の方です。
ですが、三角様は夢主がもしも死体となったとしても手放すことは出来ないでしょう。
死骸や腐敗に嫌悪を示す三角様ではないでしょうし、笑いかけてもらえないのも話しかけてもらえないのも残念なことですが、彼女を手放す理由になりません。

三角様と夢主はいつまでも一緒にいます。比喩でもなんでもなく、本当に、いつまでも。


あとがき+懺悔。

さてさて、長々長と書き連ねてしまいました。わたしは自分が書き上げた作品を自分自身でどれも好んでいるのですが、Together Forever.は自分の作品達の中でも特にお気に入りなんでしょうね。
自分で書いていた時点で嫌になるほど読んだはずなのに今でもたまに読み返している作品でもあります。
そしてそのたびに、この時三角様はね〜〜〜こうでね〜〜〜こうなんだ〜〜〜〜(苦) みんなどうにか深読みしてくれ〜〜〜〜(丸投げ)とわたしの文章力の無さ故に苦しんでいた部分をもういっそ別口で書いてしまおうということで今回解説という形で書いてしまいました。

わたしは夢小説自体を読む人の解釈によって物語の本質が変わっていくものだと思っていまして、それを悪いことではなく良いものとしてとらえています。
大筋の流れや行動、お気持ちは文章上に出ている以上決まっていたとしても、それ以外、文章と文章の行間を読んだり読まなかったりするのは読み手の自由だと思っています。
だからこそ、ここのこれは、こうでこう!!!と断定してしまうような解説は本来であればわたしの主義ではありませんでした。
ですが、Together Forever.は夢主にとって全くもって訳が分からない状況の中を、しかも夢主視点で書いていった以上、書ききれなかったところがあまりにも多くなってしまい、主義に反して解説まで書いちゃった。というのが今回です。
なので、この解説を読んでいただいた後でも、知ったことかと一喝して、みなさま自由に解釈していただければ、と思っています。
第一、がば設定ですので、矛盾点も沢山あると思いますしねぇ…(小声) なんとなくで接してください。なんとなくで。

さてはて、〆も落ちも苦手なことがばれてしまいます。
こんな最後の最後の方までお付き合いいただき本当にありがとうございました。
完結した作品の解説。ってどんだけ自分の作品が好きなんだよ、といったところですが、まぁ、好きなんでしょうね。こればっかりはもう仕方がありません。好きなんですもの。
押し付けるような形になってしまいますが、誰かの「好き」にもささってればいいなぁという気持ちでいます。
いつも言っていますが、番外編もいつか書きたいなぁ〜。いつか、ですけれども。



(2021/06)


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