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朝、目覚めると隣にいたはずのリボーンの姿はなく。
綺麗にたたまれた私のスーツの上にこの部屋の鍵とメモ用紙が乗っているのを見て、私はシーツで体をくるんで黒スーツを鍵とメモ用紙と共に持ち上げた。


“ここの部屋の鍵だ。出るときはカギしてから出ろよ”


…本当、甘さのカケラもあったものじゃないわね。
そのメモ用紙と鍵をベッドの上に放り投げてスーツだけを持ってバスルームに入る。
スーツが少し皺になっていたけど…またもう一度家に帰るのは面倒だからそのままでいいかな。
温かいシャワーを浴びて身だしなみを整えながら鏡をぼんやり見ているとあることに気づいて思わず小さなため息をつく。
…赤い痕が首元に残っていたからとりあえず隠すために髪の毛をおろした。
落ちていた書類を拾い上げ、リボーンに言われた通り鍵をして出て、はたりと肝心なことに気づく。

この鍵、どうすればいいんだろう。
…ま、今度会ったときでいいかな。どうせ愛人用の鍵だろうし。

そう完結して足早に綱吉の執務室へ向かった。
綱吉の執務室の前に立つとコンコン、と二回ノックしてみる。
中の気配は綱吉の気配一つだから…ほら、すぐに返事返ってきた。




「誰?」

「空翠徠。報告書、出しにきたよ」

「あぁ翠徠か。うん、入って」

「失礼します」




カチャリ、という音と共にドアを開き、真っ直ぐ顔を上げれば綱吉がおはよう、と挨拶してきた。
しかもニコッと昔の“沢田くん”の面影が重なるような、綺麗な笑顔で。
ボスになっても本質は変わらないってことなのかな……

おはよう、と無表情で返して数枚の書類を机の上に置く。
報告書とわかるそれに綱吉がまた増えた、と苦笑した。
…確かに机の上には書類が山のように積んである。
まぁそれが増えたことは私の責任じゃない。

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