転生あつふみ(がれはでません)




夕食後、片付けを終えたふみは、濡れた手をタオルで拭いている時だった。




「ふみさん」



後ろから愛しい旦那様である敦に名を呼ばれふみは、振り返ると其処には花束を持った敦が立っていた。



ふ「ど、どうした…?」



突然差し出された花束に戸惑いながらも受け取るふみに敦は微笑んだ。



敦「今日は、ふみさんの誕生日でしょう?」



敦の言葉にふみは首を傾げた。


今日は、3月1日。
芥川ふみが生きていれば今日が誕生日だった。
だが、芥川ふみは一度敵にやられ死んだ。
そして記憶を持って生まれたが下の名前や性別は同じでも誕生日まで同じと言う訳では無かった。




ふ「今日は、誕生日ではないぞ?」




ふみが不思議そうに敦に言うと敦は、笑みを浮かべて「そうですね。」と答えた。
敦の不思議な行動にふみは、再び首を傾げると「なら、何故?」と問いかけた。





敦「“ふみさん”と言う“存在”が生まれた日だからですよ。



“前のふみさん”も“今のふみさん”も
“ふみさん”と言う存在が今日、生まれなかったら、僕は出会う事が出来なかった。






生まれて来てくれてありがとう。ふみさん。」




そう言うと敦は、優しくふみを抱きしめた。


ふみは、敦に言われた言葉に胸が苦しくなった。
悲しいとかそんな感情では無く、言葉に出来ない程の敦への愛しさが溢れだしふみは無意識に涙が頬を伝うのが分かった。














この人と出会えて良かった…。





この人に愛されて良かった…。






この人を愛せて良かった…。






ふみは、心からそう思った。



敦は、自身の腕の中で幸せそうにするふみの花束から一輪の花を抜き取るとふみの耳にいつかと同じ様に花を差した。



ふみは、手元にある花束をよく見ると赤い薔薇の花が11本ある事に気がついた。




敦「薔薇の色と本数に意味があるのは知っていますか?」




敦の問いかけにふみは、コクリと頷いた。



敦「本当は、薔薇の花999本をふみさんに贈りたかったんですけど、本数も多いし頂いても困ると思ったのでやめました。

だから、数が少ないですが赤い薔薇11本と別の色の薔薇を1本贈ることにしました。」



優しくふみに微笑むと敦は、抱きしめていた腕を緩めふみの左手を握ると手の甲に口付けを落とした。





敦「赤い薔薇の花11本の意味は、【最愛】








そして、ふみさんの耳に差したのは黒い薔薇。







黒い薔薇の花言葉は、【決して滅びることのない愛】」





ふみは、花の意味を敦から聞いた瞬間、再び涙が頬を伝うのが分かった。




ふ「ありがとう…敦さん。」




ふみは、小さく敦にお礼を言い花束に目を向けると薔薇の花の陰に鈴蘭の花がある事に気がついた。



ふ「鈴蘭…」



ふみがそう呟くと敦は、嬉しそうに「気づきましたか?」と言った。



ふ「敦さんの誕生花…」


鈴蘭は、敦の誕生花である事を知っていたふみがそう言うと敦は「知ってたんですね」と優しげな声色でふみへ言った。


ふみはコクリと頷くと「前にも入っていた…」と懐かしむ様にその鈴蘭の花を見つめた。



敦「鈴蘭の花は、僕の誕生花でもありますが今回は、花言葉が僕達にピッタリだと思いコッソリと入れてもらいました。」



ふ「ピッタリ…?」



ふみは、鈴蘭が敦の誕生花である事を知っていたが花言葉までは知らなかった。
きょとんするふみに敦は、ふふっと笑うとふみに花言葉を言った。



敦「鈴蘭の花言葉は、“優しさ愛らしさ” “謙遜” “純粋”


そして…



“再び幸せが訪れる”」




“ね?僕達にピッタリでしょう。”




そう言って笑う敦にふみは、ぎゅっと抱きついた。


敦は、ふみを受け止めるとぎゅっと抱きしめ返した。




敦「生まれてきてくれてありがとう。




貴女と共に生きれて幸せです。




永遠に愛しています。」






ふみ「ありがとう、敦さん。




私も貴方と共に生きれて幸せです。




永遠に愛しています。」



そう言うと二人は顔を見合わせて微笑んだ。