(花吐き病パロ)
いつも通りだった。
いつも通りの筈だった。
いつもの様に任務を遂行した私は拠点に帰り首領に報告後、自分の家に帰ろうと帰り道である公園を歩いていた時だった。
背後から私の名を嬉しそうに呼ぶ声に私は、振り返り嫌そうな表情を見せると私を呼んだ声の主は、へらへらと頬を緩ませながら阿保面を浮かべ笑っていた。
ふ「人虎…貴様、暇なのか?毎日毎日…」
敦「暇では、ありませんよ{emj_ip_0792}こうしてふみさんを待つのも旦那の仕事ですから{emj_ip_0792}」
ふ「誰が旦那だ。巫山戯た事を言っているとその胴体バラバラにするぞ人虎」
敦「僕がバラバラになってしまってもお側に置いてくださいね{emj_ip_0792}」
ふ「誰がそんな事するか{emj_ip_0792}そんな趣味など持ってはおらぬ{emj_ip_0792}」
あぁ、言えばこう言う人虎に私は苛立ち、今此処で本当にバラバラにしてやろうと異能を発動させようとした時であった。
タイミング良く、人虎が私の目の前に白い箱を差し出した事により私はピタリと動きを止め、その箱をじっと見つめた。
そんな私に人虎は「最近出来た、ケーキ屋さんのマカロンなんです。一緒に食べませんか?」と言うと微笑み、私は“マカロン”と言う言葉に素早く反応するとコクリと頷いた。
人虎は、私の手を握るとそのまま近くのベンチへと歩いて行き、私を座らせ人虎自身も私と少しだけ距離を置きベンチに座ると私との間にマカロンが入っているであろう白い箱を置き、中を開けた。
箱の中には、色とりどりマカロンが入っており、どれも私には美味しそうに輝いて見え、私は自身の頬が少し緩むのが分かった。
人虎は、そんな私を見たのか「ふふっ」っと微笑むと「御好きな物をどうぞ」とマカロンを選ばせてくれた。
人虎は好かぬ。
いつも龍之介の関心を奪い、私に今までに感じた事の無い“不快な感情”を芽生えさせる。
いつもの私なら他人の言う事など気にせずに我が道を進むのに人虎が関わると全てが台無しになる。
本当に人虎は好かぬ。
だが、こう言う気遣いが出来るところは……嫌いで無い。
そんな気持ちを隠す様に私は、濃い緑色のマカロンを手で摘むと口へ運んだ。
濃い緑色なマカロンは、抹茶味で甘くサクサクとしたマカロンの不思議な食感を堪能していると隣で人虎がごほっと口を自身の手で覆いながら苦しそうに咳をした。
私は、マカロンを飲み込むと苦しそうに咳き込む人虎の背中をいつも片割れである龍之介が咳き込む時と同じ様に撫でてやると人虎は、更に苦しそうに咳をした。
ふ「……大丈夫か…?」
あまりにも長く咳き込む人虎に私は、背中を撫でながら問いかけると人虎は、途切れ途切れに「だい、じょ…っぶ…で、す」と言う姿に私は、少し心配を感じた時だった。
人虎が更に強く咳き込んだ瞬間、私は突然目の前で起こった事に驚き目を見開いた。
咳き込む人虎の口からはらはらと赤い花びらが吐き出された。
私は、初めて見る光景に訳が分からず、その花びらに無意識に手が伸び触れようとしたところを人虎が「触るなっ{emj_ip_0792}」と私の手を勢いよく叩いた。
ばちんっと人虎の手に弾かれた手は、ジンジンと痛み私は手を胸元で握り締めながら人虎を見つめると人虎は、自身のした行動に目を見開き「あっ…」と声を漏らすと悲しそうな顔をして「すいません…っ」と私から逃げる様に去って行った。
私は、小さくなる人虎の背中を見つめた後、地面に散らばる人虎の口から吐き出された赤い花びらを拾おうとしたがまるで触れるなと言う様に赤い花びらは風に舞い遠くへ消えてしまった。
「ふみ?どうしたの?」
エリス嬢の私を呼ぶ声に私は、ハッと意識を取り戻した。
目の前で下から私を心配そうに覗き込むエリス嬢に私は、今、首領の部屋で任務の報告をしていた事を思い出すと目の前にいるエリス嬢と椅子に座りエリス嬢と同じく私を心配そうに見つめる首領に深々と頭を下げ、「申し訳ございません。呆けておりました。」と謝るとエリス嬢は「ふみにもそんな事があるのね」と笑ってくれた。
目の前に座る首領は、心配そうな表情を浮かべたまま「疲れているのかもしれないね。ゆっくり休んでおくれ。」と言うと私に退がる様に命令した。
私は、首領とエリス嬢に再びに頭を下げ、背を向けると踏み出そうとした足をピタリと止めた。
森「どうしたのかね?」
エ「ふみ?」
背後から聞こえる二人の不思議そうな声に私は、振り返り気になっていた事を訪ねてみた。
ふ「首領…首領は“花吐き病”と言う奇病をご存知ですか?」
首領は、私の問いかけに目をキョトンとさせると顎に手を当て何かを考える様な素振りを見せた。
森「どうしてそんな事を尋ねるんだい?」
目を細め、私に問いかける首領に私は、ゾクリと冷たい物が背中を伝うのが分かった。
私は、咄嗟に「知人がその様な話をしておりましたので」と嘘をついた。
“花吐き病”
私は数日前、目の前で見た人虎が口から花びらを吐く光景に目を疑い、あれは幻覚だったのではないかと考えた。
だが、見たこともない人虎の表情とズキっと痛む弾かれた手があれは幻覚では無く現実だと認識させた。
次に考えついたのは、あれが“敵の異能によるものではないか。”と言う事だった。
そうなれば被害者がいるのでは無いかと片っ端から他に被害者が居ないかを調べたがその様な異能力事件の情報など出てこなかった。
だが、事件では無いがひとつだけ私が目の前で見たあの光景に一致する事が記載されている古書が見つかった。
その古書には「花吐き病」“室町時代に爆発的に流行した奇病である。”と記載されていた。
古書を読み進めて行くが“吐かれた花に接触することにより感染する”と書かれていた事からあの時の私が花びらに触れようとした時に怒った人虎を思い出すと人虎は、何らかにより感染者の吐いた花びらに触れ、この奇病に感染したのでは無いかと言う結論に辿り着いた。
感染したのならば、如何にか完治させる方法があるのでは無いかとその古書を最初から最後まで読んだが完治させる方法が載っていなかった。
ふっとその「花吐き病」の事を思い出した私は、医者である首領ならば何か聞いたことが有るのではないかと思い訪ねてみたのだった。
これは、人虎の為にでは、無い。
唯、目の前で見た光景に対しての疑問を解決したいだけだ。
私は、一人、心の中で言い聞かせる様に呟いた。
そんな私を知ってか知らずか目の前に座る首領は、私をじっと見つめた後、重い口を開いた。
森「昔、医者をやっていた頃にひとりの女性に出会った事があってね。
その女性は、世にも珍しい“嘔吐中枢花被性疾患”の感染者だったのだよ。」
ふ「嘔吐中枢花被性疾患…?」
聞いたことの無い、病名に首を傾げると首領は、「君の知人の言う花吐き病の正式名称だ」と教えてくれた。
森「嘔吐中枢花被性疾患、通称花吐き病は室町時代に流行した奇病だと言われていてね。
感染者の吐いた花びらに接触する事で感染する感染力の強い病でね。
唯、触れただけで感染しても直ぐに病状は現れない。」
ふ「感染してから長い年月を掛けて発症すると言う事ですか?」
森「いいや、発症は人それぞれだ。
花吐き病は、“片思いを拗らせた時のみ”発症する。」
ふ「……はっ?」
私は、首領の口から出た言葉に驚き、声をあげると首領は、困った様に笑いながら「本当だよ。」と言う首領に私は「ほ、本当なのですか…{emj_ip_0793}」と戸惑い再び聞き返してしまった。
森「“片思いを拗らせ苦しくなると花を吐き出す”…
薬による有効な治療法はまだ発見されておらず、両思いになることによってのみ感知すると言われている恋の奇病だ。」
そう私に話す首領の瞳が少し、遠くを見ている様な気がした。
ふ「……もし、感染者の人間が両思いになれなかったら….
どうなるのですか…?」
森「……そのうち、花びらが呼吸器官を圧迫し…
死に至る。」
首領の言葉に私は、頭が真っ白になった。
森「私の嘗て出会った花吐き病感染者が片思いをした相手が幼馴染の男性だった。
だが、幼馴染故に想いを伝えられないまま幼馴染の男性は別の女性と結婚をした。
その時にやっと自分の気持ちに気がついたが遅くてね。
花吐き病が発症し完治する事も無く、その女性は彼を想いながら亡くなったよ。」
厄介な奇病だね…と笑う首領に私は、何も言えなかった。
強過ぎる衝撃に私は唯、立ち尽くす事しか出来なかった。
私は、その後どうやって家に帰ったのか覚えていなかった。
唯、気がついた時には仕事から帰った服のまま自室のベッドの上に横たわっており、布団が何故か涙で濡れていた。
自身の濡れた頬に触れながら私は、ひとりベッドの上で体を縮こまらせ瞳を閉じた。
その時だった。
ブーブーと鳴り出した携帯のバイブに私は、起き上がり床に落としていたカバンから携帯を取り出すと誰から着信なのかを確認しないまま通話ボタンを押した。
ふ「もしもし…」
私がそう言うと「やぁ、ふみちゃん。こんばんわ」と電話越しに私の苦手な声が聞こえてきた。
私は、バッと携帯の通話相手の表示を見ると其処には“太宰さん”と表示されており、無意識に眉間に皺が寄るのが分かった。
「こんな夜遅くに何か御用でしょうか太宰さん」と自分でも吃驚する程の低い声で問いかけると太宰さんは、私に「あはは、凄い不機嫌そうだね。」と笑い、苛ついた私は「用が無いのなら切ります」と通話を切ろうとした。
だが太宰さんの口から出た「敦くんを知らないかい?」と言う言葉にピタリと指の動きを止めた。
ふ「人虎…ですか?」
何故?と言う問いかけに太宰さんは、「数日前から探偵社に出勤せず、寮にも帰っていないのだよ。」と何処か心配そうに言った。
私は、その話を聞いた瞬間、体が一瞬にして冷たくなった様な気がした。
“もしかしたら、花吐き病により人虎は死んでしまったのでは無いか”と頭に過ぎったからだった。
突然、反応しなくなった私に太宰さんが「ふみちゃん?おーい、聞いているかい?」と問いかける声に私は、少し震える声で尋ねてみた。
ふ「………太宰さ、ん……
人虎は、花吐き病に感染しているの、です…か?」
私の問いかけに電話越しで騒いでいた太宰さんが一瞬にして静かになった。
数秒の沈黙の後、太宰さんは冷たい声で「そうだよ。敦くんは花吐き病に感染している」と聞きたくなかった返答が返ってきた。
私は、きゅっと胸が苦しくなるのが分かった。
太「ふみちゃん、如何して敦くんが“花吐き病”の感染者だと思ったんだい?
其れに何故、世にも珍しく一般人や其処らの闇の人間では知るはずの無い花吐き病の事を知っているんだい?」
冷たい声で電話越しの私に問いかける太宰さんに私は、此れまでの経緯を全て話すと太宰さんは、納得したのか「そうだったんだね。」と優しい声色で返してくれた。
ふ「人虎は…何故花吐き病に感染を…」
太「……うちの社長の友人からの依頼でね。世にも珍しい花吐き病の感染者と接触したのだよ。
その時、運悪く花吐き病感染者の嘔吐した花びらに敦くんが触れてしまってね。
其れで感染してしまったのだよ。」
“困ったものだ”と言う太宰さんに私は、何も言えなかった。
太「日に日に、花びらを吐く量も増えていた…
敦くん自身、見た目は元気そうだけど吐くときはとても辛そうでね…。
私達も見てられなくて与謝野先生の異能で治るかと思ったが…」
“駄目だった”と呟く太宰さんに更に私の胸が苦しくなった。
太「ふみちゃんの話を聞いて敦くんが消えた訳が分かったよ。
敦くんは、優しいから私達やふみちゃんを感染させない様に姿を隠したのかもしれない。
近くに居れば花びらに触れる確率は高くなる。
与謝野先生の異能も特効薬も無い奇病だ。
感染すれば大変な事になる。」
真剣な声色の太宰さんに私は、あの日の去り行く人虎の背中を思い出した。
私の手を弾いた後、申し訳なさそうな顔が私の脳裏に焼き付いて離れなかった。
ふ「人虎は……馬鹿だっ」
太「………うん、そうかも知れないね。」
ふ「人虎は……このまま死んでしまうのでしょうか。」
太「分からない。
でも、このまま行くと死は避けれない。
ふみちゃん、君なら敦くんの花吐き病を完治出来るはずだよ。」
太宰さんの言葉に私の体は無意識にビクッと震えた。
違う、人虎を助けるのは私では無いと首を振った。
ふ「違う…
人虎は、もっと違う人が好きなはずです。
私なんかよりもっと人虎の背中を支えれて、寄り添えて…
陽の光が似合うもっと違う人間が居るはずです。
私じゃない。
人虎が好きなのは私なんかじゃない。
私じゃ、人虎を完治させることは、出来ない。」
太「何故そう思うんだい?
常日頃から敦くんは、ふみちゃんを好きだと痛いくらいに叫んでいるだろう?」
ふ「あれは、私を揶揄っているだけです…っ{emj_ip_0792}
私の事など…」
太「ふみちゃん」
私の名を呼ぶ冷たい太宰さんの声に私はビクッと体を震わせた。
太「……君は、貧民街出身で家族以外から愛情をもらった事が無かったね。
だから、初めて他人から向けられる愛情を理解する事が出来ないんだね…。
戸惑う気持ちも分かるよ。
敦くんの愛は、真っ直ぐ過ぎて君には眩しすぎると感じているのだろう。
だが、愛を知らないのは敦くんも同じだ。
彼は孤児院の出身で彼の居た孤児院は、人権を無視した酷い有様だった。
そんな、愛を知らないまま育った彼は、初めて愛を知った。
ふみちゃん、君と出会った事で…
君を好きになった事で。
君が敦くんに愛を教えたんだ。
敦くんの愛を受け止める相手は他の人間では無い、
愛を教えた君しかいない。」
私は太宰さんの言葉を聞いた瞬間、自身の頬にポロポロと涙が伝うのが分かった。
無意識に流れる涙を何度も何度も手で拭うが溢れて止まらなかった。
ふ「私は…私は、分からない…
好きとか、愛、とか…私は……」
太「“敦くんが死んでしまうかもしれない”と聞いて、ふみちゃんは、どう思った?
あぁ、答えなくていいよ。
ただ、消えて欲しく無い、側にいてほしいと思ったのなら…」
“それは、好きって事だよ”
太宰さんの言葉に私は、コクリと頷いた。
太宰さんとの通話を切った私は、ひとり横浜の観覧車の見える港へと足を向けた。
この場所は、いつも私が眠れない時に散歩がてらに訪れる場所であり、一度、敵の異能でもちますになった人虎を連れて来た場所でもあった。
確信なんてなかった。
だが、何故か私には此処に人虎がいる様な気がした。
私がいつも座るベンチへと歩いて行くとそのベンチに体育座りで自身の膝に顔を埋めるひとりの少年の姿を見つけた。
ベンチの下に散らばる花びらと月明かりに照らされる少年の姿が幻想的で儚げに見えた。
かつんと踵を鳴らしひとりの少年、いや太宰さん達が探していた人虎に近づくと人虎は、私の靴の音に気がついたのか顔を上げ、私をその薄紫黄色の瞳に写すと目を見開き驚いた様な表情を見せた。
数日前より少し痩せた様に見える人虎の姿にきゅっと私の胸は苦しくなった。
ふ「見つけたぞ、人虎。」
私がそう言うと人虎は、苦しそうな表情で「如何して…」と問いかけてきた。
虎「如何して此処に…」
ふ「……太宰さんから連絡があった。
人虎が“数日前から無断欠勤をし寮にも帰っていないので何か知らないか”っとな。
後、花吐き病の感染の話も聞いた。」
私が少し人虎から視線を外しながら答えると人虎は、「そうですか」と力無く笑うとゴホゴホッと咳き込み始めた。
手で口を押さえながら咳き込むが手の隙間からポロポロと赤い花びらが零れ落ちる姿に人虎が本当に花吐き病に感染しているのだと思い知らされた。
あまりにも咳き込み、座っていたベンチからずり落ちる人虎に私は駆け寄ろうとすると「来るなっ{emj_ip_0792}」と叫ばれた。
敦「来ないで…くだ、さい」
“お願いです…。ふみさんに感染して欲しく無いんです”と泣きそうな顔でそう言うと再び咳き込み、大量の花を吐き出す人虎に私は、人虎の忠告など無視して近づいた。
ベンチからずり落ち、地面に座り込む人虎の前に私も同じく地面にぺたりと座り込んだ。
人虎が吐き出していた赤い花びらは、薔薇の花びらだった。
私は、散らばる花びらを一枚指で摘むと驚く人虎を他所にその花びらを口に咥えた。
敦「な……何してるんですか{emj_ip_0793}
花吐き病の話を聞いたのでしょう{emj_ip_0793}
花びらに触れたら感染すると…っ{emj_ip_0792}」
目を見開き、私の方を掴み怒るいつもと違う姿の人虎に私は、“面白いものが見れた”と別の事を考えていた。
敦「僕は…っふみさんに感染して欲しくなかったのに…
何で…っ」
苦しそうな顔をする人虎の姿に私は、胸がぎゅっと息苦しさを覚えた。
あぁ、この人は本当に優しい人……。
真っ直ぐで…
人の為に生きれる人…。
だから私は……。
この人が….。
ふ「………安心しろ。
私は、花吐き病に感染などせぬ。」
敦「何を言って……」
私は目の前の人虎の瞳を真っ直ぐ見つめた。
「何故なら、人虎。
貴様の花吐き病は、完治するからだ。
今この場でな。」
「え…っ?」
そう言うと私は、人虎のシャツの襟元を掴むとグイッと自身へと引き寄せた。
そして、赤い薔薇の花びらを吐き出す人虎の唇に自身の唇を重ねた。
薄っすらと目を開けると目を見開き驚く人虎の瞳と視線があった。
私は、唇を離し何かあったのか処理しきれず呆然とする人虎にふっと微笑むと口を開いた。
ふ「貴様の奇病は、完治する。
もし、花を口に咥えた私が花吐き病に感染していたとしても……
貴様が私を好きなら私の花吐き病も発症する前に完治する筈だ。」
“太宰さんから完治の方法は、聞いているのであろう、人虎。”
敦「嘘……本当…ですか…っ?今の、夢では…」
私の言葉に人虎は、信じられないと言う様に今、起こった事を確認する人虎に私は「私は…自分の思いを言葉にするのは苦手だ。だから私を好いているなら私の今の行動で全てを察しろ」と言うと人虎の片手に触れた。
すると、人虎はぎゅっと私の手を握るとゴホゴホッと咳き込んだ後、銀色の百合の花を一輪吐き出した。
“銀色の百合の花を吐き出したら完治の印”
そう、人虎の花吐き病は、今この場をもって完治したのだ。
私がその銀色の百合を拾った瞬間。
私は力強く目の前にいる人虎に抱きしめられた。
敦「ふ、みさん…っ大好きです…っ
ずっとずっと…此れからもどんな事があっても…。」
ポロポロと笑いながら涙を流す人虎の涙を指先で拭い、そのまま人虎の背中に腕を回し人虎の言葉に応える様に腕に力を込めた。
終わり。
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