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走り去る君を

口が開いたまんまの俺は
ぼーっと見つめることしかできなくて



親友の言葉で我に返る。



「え、…なんかしたの?」




『…………いや、わかんない』




もしかして、
……今の会話聞かれてた?

シゲの好きな人の話してたから?





…………俺が
シゲに好きな人がいるって知りながら

あいつのことを応援したって


思われ、た…?






『シゲごめん!

ちょっと俺行ってくる!!』




俺は彼女の向かった方へ走り出す。





後ろから
シゲの

"頑張れよ"


って声が


聞こえた気がした____









______
____





『はぁっ……はぁ…』




あたりを見回しても、彼女はどこにも居なくて



『くっそ、どこ行ったんだよ…』



こっちに走って行ったと思ったんだけどな



『真尋の行きそうなところ……』





あ、



1つ、思い当たるところがあった。






_______





『……はぁっ……はぁ…

やっぱりっ、ここにいた……』




「……なによ、」



冷たく、鋭い視線。




『探したんだからな?』




彼女がいたのは近くの小さな公園のベンチ。



よくこの公園で2人で遊んで

家に帰って怒られて…




小さい頃の、思い出の場所




「うっさい、嘘つき、最低。」



なんて、鋭い視線。




……他のやつからこんなことを言われてもきっと

ちっっっとも傷付かない。





けど、好きな人に、真尋にそんなこと言われると

グサッと刺さるんだよなぁ……





『……ごめん、嘘ついてたわけじゃないんだよ。』



「だってさっきあんた、加藤くんの好きな人が…って言ってたじゃん!



この前応援してくれるって言ったの嘘だったの?

加藤くんに好きな人がいるって知ってて私に頑張れなんて言ったの?心の中で笑ってたんでしょ?!」





怒ってる彼女の目からは涙がポロポロ零れ落ちていて。





『……言い訳に聞こえるかもしれないけど、聞いて?』




「やだ、」




『…いいから、聞けよ。お前なんか勘違い…「知らない。」




『…はぁ……

じゃあ今から話すことは全部独り言だから。』



「…は?何言ってんの…」




『…シゲに好きな人がいるって知ったのはさっきなんだよ。


帰り道にふと聞いてみたくなって、知った。』





彼女の体が、ピクッと揺れる



『応援してるって言った時は本当に知らなかった。いるってことも知らなかった。』




真尋が俺の顔を見て、
少し、切なそうな表情を見せた。




『言い訳に聞こえるかもしれないけど…

って独り言か、これ。』




少し悲しそうに、君が笑う。






俺は付け足すように




『…でもまぁ、応援はしてなかった……けど。』



……あ、
余計な事言っちゃったかな




彼女は腕で涙を拭いながら





「……頑張れって、言ったくせに…」




そう小さく呟いた。





『好きな人が好きな人と上手くいってほしいって思う奴いるわけねぇじゃん?』




「…そ、だけど……嬉しかったんだよ?」



真尋の目からは

涙がポロポロ出てて
目の周りは赤くなってて



俺の好きな、大好きな笑顔とはかけ離れていた。




『ご、めん』




「あーあっ!失恋決定か〜…

辛いな〜……手越くんもこんな気持ち、だったんだね〜…」





『……そんな無理して笑わなくても、大丈夫だよ?


どんなお前でも俺は大好きだから。






……たとえ泣き顔がブサイクでも、ね(笑)』




「…ブサイクとか、うるさいなっ!

ねぇ、





……私、泣いても…いいの?」





『……うん、俺の胸でよければ』




その瞬間、俺にぎゅっと抱きついてきて


うわぁぁあ って子供みたいに
俺の胸に顔を押し付けて泣いた。



『……っ…』




抱きしめようとしたところで

ピクッと手を止める。





『……よしよし』





俺は、頭を撫でることしか出来なかった。



……本当は思いっきり抱きしめて

俺のところ来いよって言ってあげたいけど


そんなこと出来る状況じゃないし。






すると



《わー!カップルだ!!》



って近くのちびっこ二人が俺たちの方を指さす。



『は?!カップル?!』


《うわー!!お前彼女泣かせんなよ!!!》



〈ほんとだ!金髪のくせにさいてー!!〉



『はぁ?!金髪関係ねーだろ!!』



〈うるせぇ金髪!!〉



『はぁ?黙れガキ!』



《なんだとお前〜……》



「ぷっ…」



『〈《 え? 》〉』



と見事にハモった俺らにまたさらに真尋は笑ってて



「あ〜、面白い
なに?あなた達3人兄弟?」



って指で涙を拭いながら

笑顔でそう言う。



『……その顔だよ』



「え?」



『俺はお前の…〈お姉ちゃん笑ってる顔可愛いね。〉



《ほんと、こんなやつのために泣いてちゃだめだよ》



つくづく俺の邪魔をするなこいつら…




『お前らなぁ!俺の見せ場取りやがって!』



〈あっ!やべえ!!見ないといけないアニメ始まるぞ!!〉



《うわ!金髪のせいで見逃すじゃねぇか!》



〈まだ間に合う!急げ急げ!〉



またなー!って元気な声で

走って行くちびっこ達。




ここに来たらまた会えるかな?

なんて考えたり(笑)





『……なに、いいとこ取られた感じ?
俺超かっこわりぃじゃん!』





「ふふ、そんなので私を好きにさせられるのかな〜?」





『……えっ、それって』




んー、と伸びをし彼女が立ち上がる




「よーし!手越くん!甘いもの食べに行こうよ!

今日は頑張った御褒美だ〜{emj_ip_0092}」





ってスキップしながら言うけど




『…まだ頑張ってねえじゃん?』



その言葉で彼女の足が止まる



「………私失恋したんだよ?」



『でも、頑張ってねえじゃん』



「どうしろって、いうの?」




背を向けたまま小さな声で俺にそう尋ねる彼女はどこか弱々しくて



『けじめつけるために

"告白"



してもいいんじゃない?』




「…当たって砕けろってこと?」




『その方がスッキリして諦められるよ』




「あんた諦めてないじゃん」



『……頑張ったら俺が甘いものご馳走するからさ』




「何無視してんのよ…



ってほんと?!奢ってくれんの?」




ってキラキラ目を輝かせた真尋が振り向く



『頑張ったら、ね』




「……うん、私

頑張ってみるよ」




そう決心した彼女の顔は
今までで1番、かっこよかった。









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