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真尋side






手越くんと並んで
放課後の教室から中庭を見下ろす。



『……なんて言ってんだろうね』



手越くんは、
とってもとっても優しいから、


私に気を遣って
この冷たい空気が嫌だから
自ら沈黙を破ってくれる


「…………」



でも 私は
何も、言えなくて



ただただ二人を見つめる



私たちが見下ろす中庭には

加藤くんと、




彼の、好きな人の姿____




加藤くんは頭をポリポリかいて……
照れてる時のクセ…なのかな。



顔が真っ赤に染まってて
とっても緊張している表情で
必死になにかを彼女に伝えてる。




…あ、少しお辞儀した。
"お願いします" とでも言ってるのかな?






………




…会話が聞こえなくてよかったかもしれない。
手越くんが隣にいてくれてよかったかもしれない。





そうじゃないと、

もし1人だと、



涙が溢れて止まらなくなりそうだから____










手越side




好きな人と、並んで
放課後の教室から中庭を見下ろす。



『……なんて言ってんだろうね』



自分から話しかけるけど




「…………」



返事はなくて。






彼女は

ただただ二人を見つめてる。







俺は、そんな君を見つめることしかできない___




「……あ、」




彼女の口から声がこぼれた時
俺はふと我に返り中庭を見下ろす。






…………シゲと


シゲの好きな人が







手を繋いで
こっちに手を振ってる









" や ば い "








そう思って横を見た時

すでに真尋はしゃがんでシゲ達から見えなくなっていた。




あまりにも痛々しいその姿に何も声をかけられなくて。







『シゲ!!おめでとう!!!!』



「おー!ありがと!!」




小山先輩がぺこっとお辞儀してくれた。




………うん、この人にならシゲを取られても大丈夫だ。

そう、思った。




「……なぁ!真尋ちゃんは?」




視界の端で影がピクッと揺れた気がした




『えーっと、トイレ!』



「……そっか!
てか手越ごめん!俺今日は先輩と帰るわ!」




『早速ラブラブかよ!
先輩!!シゲをお願いしますね!』




小山先輩が笑顔で頷く。




「うるせー!お前も頑張れよ!」



『おー!』




俺は笑顔でシゲを見送り

どんどん遠くなる2人の影を見つめていた






静かな教室に

グスっ、ズッ……




という彼女の声が響き渡る




『……大丈夫か』



「…………大丈夫、っ…」




彼女の泣き顔を見るのは何度目なのか。

その度に、俺の胸はバカみたいに傷つく。
















真尋side







どうしてだろう、涙が出るのは。
分かっていたはずなのに。
知っているはずなのに。





どうして、
溢れた涙はとどまることを知らないのだろう。





手越くんと二人で並んで、中庭を見ていて
加藤くんが彼女に告白している場面を見て



我慢出来なくなった。




応援してたのに。

"頑張れ"って





本当に思ってたのに。





もうとっくに、ふられているのに。

やっぱり、まだまだ彼のこと諦められないんだなぁ……




『……大丈夫か』




手越くんの、優しい声。
なんだろう。少し、落ち着く。



「…………大丈夫、っ…」




手越くんに泣いてるところを見られるのは何回目かな



それだけ、あなたに心を許しているのかな





もう、わかんないよ。





____________




【本心】



……大丈夫だなんて強がっちゃって




____大丈夫だなんて言っちゃったけど








……そんなわけないってわかってるんだからな



____多分彼にはバレてるんだろうな







……俺に頼ればいいのに



____彼に頼ればよかった







……はぁ、可愛くない女



____可愛くないって思われてるんだろうなぁ…






……俺んとこ来いよな



____彼を好きになりたいな



















……でも、無理なんだろうな



____少し時間かかっちゃうかもしれないな











……もう諦めた方がいいのかな




____早く加藤くんを諦めないと













……諦める努力もしねぇとな




____彼を好きになる努力をしないと











……幸せになってほしいな



____幸せになれるかな















……頑張れ、俺



____私も、頑張ろう。













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