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「…………」


『…………』



彼女が泣き止んだけど、
お互いに何も言えなくて



真尋の隣に三角座りでいることしかできない俺。




本当は抱きしめたいけど
本当は俺の胸に飛び込んできてほしいけど
本当は好きって言いたいけど




そんな雰囲気でもないし

今の俺にはそんな度胸もない。




すると

彼女が呟いた。



「……ごめんね」



と小さく。



『……なにが』


「…泣いちゃって」


『……大丈夫だよ、…………多分』


「…加藤くんにおめでとうって言いそびれちゃった」



ふふふ、って無理して笑う目元は赤くて痛々しい。



『俺が言っといたから大丈夫だろ』


「ねぇ、手越くん」


『ん?』


「私ね、手越くんのこと前向きに考えるよ」


『……おう』


「今はまだ加藤くんでいっぱいだけどね、」


『なんだそりゃ』


「でもね、手越くんの事を好きになりたいって思うの」



『……じゃあ』



「ん?」



『俺はまだ……諦めなくてもいいってこと?』



「そんな事言ったって……私のこと諦められるの?(笑)」



『……無理だな、何回もそう思ったわ』



「時間かかるかもしれないけどね」



『うん』



「……待っててね」





笑顔で俺にそう言った真尋の頬には

すっかり涙の渇いた跡があった。





でも、いつもと少し、顔付きが違って見えた。











ーーーーーーーー
ーーーー




学校から駅までの道のり。



さっき私が前向きに考えるって宣言したからか…




なんだか照れくさくて
なにも話せなくて(泣)




『真尋はさ』



「うぁぁっ!はい!」



『……やっぱなんもない』



「……そう?


あ、さっき気付いたんだけどさ
小山先輩って私が中学の時に好きだった小山先生の妹だよね」



『あ、そうなんだよ(笑)』



「だよねだよね!!

なんか見たことあると思ったら……なるほどね(笑)」




『お前って小山先生のこと好きだったなー、懐かし』



「手越くんはその時も私の事好きだったけどね」



『そう、告白したらさ
小山先生が好きなの、ごめんね って断られた』




「そーだっけ?(笑)
……そんな前から好きでいてくれてたんだよね




ありがとう」



『今でも好きだけど』



「……うるさい」



『今の告白なんだけど』



「………知らない」



『は〜、可愛くねぇな』




「…………私だってねぇ」



『なんだよ』



「……ムカつくからなんでもない」



『はー、可愛くねぇ!』



「ふん!そんな私が好きなくせに!」



『おまっ、さっきからうるせぇな!』



「いーじゃん!ほんとでしょ〜?(笑)
私のことが〜?」



『うるさい!黙れ!』



「はは〜ん(笑)照れてる〜〜(笑)
手越くんの弱点ゲット〜(笑)」



『……クソ女…』



「ん?なぁに〜?(笑)
クソ女?

……でも、顔赤いよ?(笑)」



『知らねぇ!』



「真っ赤な手越くん{emj_ip_0177}」




もー!!!!うるせぇよ!

って照れてる彼のことを初めて、可愛いって思った。
いや、思ってしまった…


失恋しちゃったけど、また新しく何かが芽生えそう






そんな予感がしたのは確かだった。











~次の日~




手越くんのおかげで加藤くんには笑顔で




「好きな人と上手くいったんだよね、
よかったねっ!!!」




って祝福できた。


彼も


「……うん、ありがとう。
そうだ。真尋ちゃんも頑張ってな」



こう言ってくれたけど




頑張って、って何を頑張るんだろう?
まだちょびっとは加藤くんのこと好きなのに。


……わかんない。








____






シゲが上手くいった次の日



「よかったねっ!!!」



って彼女は笑顔で祝福してて
割と元気だった。

……なんでだろう。



好きな人に彼女ができたんだろ?

普通、ちょっとは落ち込むと思うんだけど…



ま、真尋に暗いのなんて似合わねーし
ちょうど良かったんじゃねーのかなって


考えることにした




……


そーいえばさっきシゲに



「……お前、よく頑張ってんな」




って言われた。
…………何を頑張ってんだろ





その時は



『おぅ!だろ!!』



って返したけど
なんなんだ?あいつ






________





そこからは


なんてことない日がずっと続いた



告白しても
相変わらず、




『なあ!付き合って!』



「無理。私まだ…『はーい、わかった』




即答で断られるし

まだシゲなのかよ、って感じ。




『俺のこと前向きに考えてくれるんじゃないの』



「これでも考えてるつもりなんだけど……(笑)」



『……そんなフリ方ねーわ!
俺じゃなかったらメンタルズタズタだぞ?』



「……ハイ、ワカリマシタ」



『次言う時はちゃんと考えて断れよ』



「考えとくね〜」





……真尋さん、俺でもメンタルズタズタですよ、





ーーーーーーーー
ーーーーー
ーー





『おーい、真尋』



「なーにー」



『好き』



「……ハイ」



『付き合って』



「……えーっと」



『はい』



「ごめん、なさ…い」



『あーまた傷付いたもう無理〜』



「……ごめんね」



『じゃあさ、1個お願い聞いてくんね?』



「キスとかやめてよ」



『そんなのしねーわ!(笑)』



「はい、それ以外ならいいよ(笑)」



『そろそろ俺のこと手越くんって呼ぶのやめてよ』



「えっ、なに急に」



『お願い聞いてくれるって言ったじゃ〜ん』



「うっ、」



『はぁ、真尋は嘘つく子だったんだ、』



「えー……」



『俺ら幼なじみなんだよ?いいじゃん、祐也って呼んでよ』



「…………祐也



…くん(笑)」



『……………うわ、………はい』



「なに照れてんのよ!自分が名前で呼べって……」



『下の名前で呼ばれんのって超〜〜恥ずかしいんだけど!(笑)』



「祐也くん



ふふ、いいねこれ。
恥ずかしいけど(笑)」




『真尋』



「な、によ」



『真尋っ』



「呼んであげないからね」



『なんでだよ』



「恥ずかしいから」



『真尋』



「……」



『ねーえー』



「もー!!うるさい!」



『ケチ』



「祐也くんのばーか」



『……っ…ほんっと……可愛くねぇ…』



「顔真っ赤だし説得力ないよ?」



『うっせぇ』







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