どんなあなたもあいしてる(SS)
「……がぁ、あ゙、ぐ、づゆ、ぢゃ」
「ぎ、ぐ……きた、ら、だめ、だ」
最近「個性」が暴走しないから、すっかり慣れたものだと思って油断しきっていた。
「陽二ちゃん……」
「ぐぁ、ゔ……く、るな、きずつけたく、ない、から」
よりにもよって、梅雨ちゃんの前で暴走しなくたっていいのに。
こんなキメラみたいに醜い姿、死んでも見られたくなかったのに。
校内で暴走した個性を死ぬほど恨みながら、
俺は梅雨ちゃんに声をかける。
「……ずぐ、もど、る、から……はなれ、てて」
人間とかけ離れた手足や顔。
お世辞にもかっこいいとは言えないその姿を
梅雨ちゃんに少しでも見られないよう、俺は必死に体を丸くした。
「今、相澤先生に連絡したわ。すぐに来てくれるから安心して」
そう言いながら俺に手を伸ばす梅雨ちゃん。
「だ、めだ!!」
「……大丈夫よ、陽二ちゃん。」
「お、れ、きもち、わるい、からっ、みちゃ、だめ……」
「こん、な、キメラ、なんか……」
「……気持ち悪いなんて、思ったりしないわ」
「だってどんな姿でも、あなたは私の大好きな陽二ちゃんだもの」
そう言って、梅雨ちゃんは俺を抱きしめた。
俺は何を言おうかどうしても思い浮かばなくて、
代わりに縋るように、梅雨ちゃんのその小さい背中に腕を回した。
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どんな姿になってもその人を愛するのが
愛なんだと思います。
20180418
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