寄り添いたい時もある

「·····操子の素顔見れんの、俺だけの特権だよな」


いつもは目隠しをしているため、滅多に見られない操子の素顔に、コンプレスは少し嬉しそうな声でそう言った。


「·····ふふ、圧紘ったら物好きね。こんなオバサンの顔見たって面白くないでしょう?」

「俺達、似たような歳なんだから俺は歳なんて気にしてなんかいないよ·····」

「んもう、冗談ばっかり·····」


くすくすと笑う操子を見て、コンプレスも釣られて笑みを浮かべる。

操子とコンプレスの関係は、弔達のような若々しい恋愛ではなかったが、確かに二人の間には柔らかな愛があった。


「·····圧紘。もう遅いから、寝たら?」

「ん、もう少しでその縫い物終わりだろ?だから終わるまでお前の作業見てる」

「ふふ·····仕方のない人ねぇ」


呆れたように笑いながら、操子は手元の縫い針を動かす。

·····今、操子が作っているものは、トガにプレゼントする新しいコートだった。

以前買ったコートを戦闘でダメにしてしょんぼりしていた彼女を見過ごせず、こっそりと彼女の好みに合いそうなデザインを1から起こして手縫いで作っているのだ。


「·····よし、出来たわ!」


数分後·····ようやく完成したコートを手に取り、満足げに操子は微笑む。
そんな彼女に、コンプレスは拍手を送った。


「ん、お疲れ様。良い出来じゃないか」

「ありがとう。これで、トガちゃんに喜んでもらえるといいけど·····あら?」


ふと操子が窓の外を見ると、いつの間にか雨が降り出しており、夜空には雲が立ち込めていた。


「どうやら降ってきたみたいだねぇ」

「·····えぇ、本当。寒いのは嫌だわ」

「お前は個性で感覚いじれるだろ」

「それとこれとは別よ。私だって暑さ寒さを感じたい時くらいあるもの」

「そういうもんかね」

「そういうものよ」


操子はそう言うと、ちらりとコンプレスの方を見つめる。


「·····温めてやる、とは言ってくれないの?」


悪戯っぽく笑う操子を見て、コンプレスは苦笑した。


「ははっ·····それじゃあ、遠慮なく」


そう言うと、コンプレスはそっと操子を抱きしめた。


「·····あったかい」


コンプレスがうっとりとした表情で呟く操子の頭を撫でると、彼女は嬉しそうに目を細める。

·····そしてしばらくすると、二人は静かに唇を重ねた。

それは、ほんの数秒で終わるキスだったが、二人の心を満たすには充分過ぎる時間であった。


「·····ふふ、キスしちゃったわね」

「·····そうだな」


2人は照れくさそうに笑い合うと、今度はどちらからともなく再び口付けを交わす。
そして、二人はお互いの存在を確かめ合うかのように強く抱き締め合った。


「じゃあ寝るか」

「そうね·····少し夜更かししちゃったわ」


·····そして2人は柔らかく笑い合いながら、抱き合ってベッドの中へと沈んでいくのであった。


後日、操子の作ったコートを着て喜ぶトガの姿を見た操子は、とても幸せそうな笑顔を見せたという。





―――――――――――
コンプレスと操子さんのまったりしてる愛情がとってもすっきーーー!!!!
歳いってる分、ガツガツしてなくてゆったりした恋人関係であってほしい·····。

20220526

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