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 彼はパタンと本を閉じ、立ちあがった。四つの柱により囲まれた一つの石碑は、ただひたすらに白かった。そして中心に沈められた赤色の水晶は、木々のささやきを受けて木霊する。
 ぽう、と光る無数の美しい生命は、彼とともにあった。彼は本を置いて、石碑を見つめた。


「あなたが消えて、もうどれくらいになるんでしょうね」


 彼はそうして笑みを作る。


「…どうすれば、世界は、安寧の地へと導かれるんでしょうか」


 その声は、酷く、誰かと類似していた。悲しげに寄せられた瞳も、誰かを思い出させた。


「あの方は、闇に染まりつつある。ならば――」


 彼が好きだった空を仰いで見れば、悲しいくらい蒼く澄み渡った空が、彼の心に映し出される。


「…いいや。俺の出番はもう少しあと。…ですよね、狩人さん――?」


 ふわりと風が吹いた。生温かい風は、どこからか流れてきたものだろう。彼は眼を閉じる。いずれは訪れる世界の中で、ともに過ごすであろう少女を思い浮かべて。


17/07/27 訂正
11/04/17

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