「フライモン――成熟期――タイプはウイルス――昆虫型デジモンで――必殺技はデッドリースティング。注意―デッドリースティングは、猛毒の針を飛ばす…猛毒の針!?」


 驚きを隠せず、思わず光子郎は叫んだ。フライモンの目が光を帯び、恐らくはにやりと笑った。お尻を再び彼等に向けて、デッドリースティングを放つ。『猛毒』という言葉に恐れおののいた子供たちは、急いで逃げた。
 それでも針は子供たちを襲い続けた。「太一ィ!」、「ヤマトォ!」。狙われた二人は間一髪で避けたが、再びデッドリースティングは彼等に狙いを定めた――その時、コロモンとツノモンは、進化の力を願った。栞は、やっぱり、他人事のようにその光景を眺め、芽生えた二つのデータを軽く二匹に分け与えた。
 二匹は守人の助けにより、それぞれが「コロモン進化ァ!――アグモン!」「ツノモン進化ァ!――ガブモン!」と進化を果たした。


「アグモン!」「ガブモン!」
「ベビーフレイム!」「プチファイヤー!」


 二匹は必殺技を放つも、空中を飛んでいるフライモンは何の問題もなく、軽く身を捩って避けた。


「あかん!フライモンはごっつ素早いんや!」
「マーチングフィッシーズ!」「ポイズンアイビー!」


 ゴマモンとパルモンの必殺技も、余裕の表情で避けて、子供たちに向かいデッドリースティングを放った。それは、有る一点に絞られ――「っ逃げろ、栞!!」、フライモンが風を切って飛んでいるせいか、栞の頬を暖かい風が吹き抜け、彼女の重たい黒髪が揺れた。


「栞ッ!!」


 いくら名を呼ばれても彼女はただそこにいて、フライモンを見ていた。太一が駆け寄ろうと足に力を込めた時――その大きな赤い鳥が姿を見せた。全てが炎で包まれているかのように靡く毛は、まるで不死鳥を思い出させる――それは、彼等が良く知っているバードラモンだった。


17/07/27 訂正
11/04/18

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