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「エテ、モン…」


 昨夜聞いてしまった名前を、栞は復唱した。それから、また無意識にペンダントを握りしめた。
 パグモンがトコモンを連れていったのは、進化したのが生意気だったからと言った。おそらく、あまりエテモンとは関係ないだろう。しかしその後にきたガジモンというデジモンがエテモンという名前を口走っていた。そして人間、つまりは自分たちをパグモンに見張っていろと言ってどこかへ行ってしまった。


(…そろそろ戻らなきゃ、 …ううん)


 いや、その前にトコモンを助けなければ。 トコモンを、自分が。ようやくタケルと巡り会えたというのに。 ぐっと拳に力を込めてから、パグモンやガジモンたちがいないことを確認すると、草に隠れながらトコモンが捕らわれている檻の近くへ寄った。


「栞…?」


 トコモンに小さく名前を呼ばれ、栞は草の影から頷いた。栞はトコモンの後ろにコロモンが捕らわれているのを見て、眉を寄せた。やはり自分が感じたコロモンの気配、間違ってはいなかったのだ。


「みんな、大丈夫…?」
「…うん、」
「待っててね、今助けてあげるからね」
「ありがとう…」

「アッ!」

「誰…!?…アグモン…!」


 栞はほっとしたように頬の筋肉をゆるめ、アグモンが駆けてくるのを見つめた。


「トコモン、栞も!探してたんだぞ!」
「ご、ごめんね…」
「それに…コロモン…。どうしてみんなこんなところに閉じこめられているの?」
「ここは本当は僕たちの村なんだ…。二、三日前にパグモンたちがやってきた、村を乗っ取ったんだよ!」
「それじゃあ、アイツらは…」
「大嘘つきの悪いやつらなんだ!早くみんなに知らせなきゃ!」


 トコモンが必死に叫ぶと、アグモンは力強く頷いた。


「よし、じゃあ今すぐ出してあげるからね!」
「おおっと、そうはいかないぜ!」
「…ガジモン…!」
「選ばれし子供たちと…やつらと一緒にいるという守人は、エテモン様に差し出すことになってるんだからな!」
「エテモ、ン…」


 昨日聞いた名前に、栞は目を見開いた。

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