「メテオ、ウイング!!」


 無数の炎が、バードラモンの羽から溢れだす。それは直立に立つヴァンデモンの体へと降り注がれたが、彼は自身のマントで攻撃を防いだ。「ブラッディストリーム!」そして何処からともなく出現した赤い鞭を右手に持ち、勢いよくバードラモンに向けて叩きつける――勢いを増した鞭は、バードラモンの腹部に直撃した。「バードラモンッ!!」傷ついた体のバードラモンは、羽を動かすことがままならず、気を失って地面へと落下していった。
 空は何度もその名を叫び続けた。喉が痛い。ひりひりする。少し、血の味がする。――それでも、その名を呼んだ。その声に、愛がないなんてことはない。思えば、彼女が愛を持たぬことなんて、一度もなかった。空が誰かを愛おしく思えば、大切に思えば、そこから愛は発生する。気づかなかっただけで、空はいつだって、愛に満ち溢れていた―――彼女は駆け抜ける。バードラモン。バードラモン。名をひたすらに呼びながら、野原を駆け抜けた。


―――…しゃららん。しゃららららん。


 彼女はそこで、ゆっくりと目を開けた。クリアになった視界の中で、真っ先に映り込んだのは、傷つき倒れ伏した『仲間』の姿。


―――…しゃららん。


 そして視界の端で泣き続けている、たった一人の親友。


「……そ、ら……」


 そうして、彼女は目を閉じる。


―――…しゃらららん。


 大切な友達を、もう傷つけたりしない。空の愛は誰よりも暖かくて、優しいのだから。


―――…しゃらららららん!!


 空は、走った。バードラモン。その名を、叫びながら。愛にあふれた心を、しっかりと持ちながら。――空の胸元で、愛情の紋章が赤い輝きを放った。


「バードラモ―――ンッ!!!」


 カッと光が舞い降りた。栞の透明色は空の赤色に溶け込み、混ざり合う二つの光が、周囲を照らした。震えた大地に一本の花が咲いた。その花は赤い光を帯びて、やがてゆっくりと、芽吹いた。
 本当の愛情が、バードラモンに降り注ぎ、天井を突き破った。再びカッと世界が輝き、バードラモンは、進化の光に包まれた。


17/07/27 訂正
11/04/18

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