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「栞、!」


 イヴモンは、今確かに栞の声を聞いた。"助けて"という声が聞こえた。振り返った方角にあるのは、滝の方だった。滝の方角は、先ほどパグモンたちが探したと言っていた箇所だった。


「どうした、イヴモン!?」
「栞ノ声が聞こエタ…!」
「なんですって!?で、でもどこに…」
「滝の方カらダ!早く助ケに行かナくチャ!」
「そ、そんなハズないよ…。あそこの滝はさっき探したから…」
「さ、探した、探した…」


 一斉に焦りを見せたパグモンの方を一瞥し、イヴモンはすっと目を細める。あたりの空気も、一斉に冷めたのを子供たちは感じ取った。


「…栞に何かあったら、…僕は…僕は、お前らを…!」


 伏せられた青色の瞳は、まるで氷のように冷たかった。
 空はそっと白い毛玉のようなイヴモンを抱きしめ、その顔を覗いた。


「とりあえず、見に行きましょう。イヴモン、いいわね?」
「ッ、…うン…ゴめンネ」
「いいのよ。大丈夫だから、」
「ダ、ダメ、ダメッ!滝はダメだよ!」
「…どうしてダメなの?ちょっと見てくるだけよ」


 そういう空の瞳は、もうパグモンの言うことを信じてはいなかった。
 イヴモンに恐怖心を抱き、ベンチに座り込んでしまったミミは、目の前を黒い何かが横切るのを見て、「キャーッ」という悲鳴を上げた。パルモンは驚いて仰け反った。


「ボ、ボタモンや!」
「どうしてボタモンがここにいるの!?」
「ボタモンはコロモンに進化する前のデジモン…パグモンの村にいるハズないよ」
「それじゃ、やっぱりここは…」


 太一は目を見開いて、滝の方を見つめた。よく目を凝らして見れば、そこから煙があがっている。アグモンもともにいるのかもしれない。


「ようこそ、ハイハイ、ようこそォ!ここはパグモンの村!……じゃないですよ、ハイハイ」


 陽気に歌ったパグモンたちは、一斉にぞろぞろとどこかへ消えて行ってしまった。


「逃げたわ!」
「だ、だましやがったんだなー!?」
「そンナのいいヨ!早ク、早く、栞のとコろヘ!」
「あ、ああ!」


 そうして、子供たちは急ぎ足で滝の方へと駆けていくのだった。


17/07/26 訂正
10/11/23 訂正

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