「いいですか?これを見てください。ライオン、射手、猿は、それぞれレオモン、ケンタルモン、エテモンを意味します。これらは先ほどの栞さんの言葉にあったように、異なる属性を持っています。つまりワクチン、データ、ウイルスです。次に星の数ですが、これは上から成長期、成熟期、完全体を意味していると思われます」


 「それを当てはまるように置いていくと…」言いながら、それに当てはまるマスにデジモンたちのカードを散らばらせる。確かに、ぴったりとはまった。


「ぴったりあうぞ!」
「すごーい!!」
「でも…」


 光子郎の視線が、ワクチンの成長期に向けられた。


「ここだけが二枚になってしまうんです。どっちかが余分だと思うのですが…。すみません…みなさんの期待にこたえられなくて…」
「何言ってんだ、よくやったよ!」


 その通り。彼の機転の発想がなかったなら、ここまで辿りつかなかった。それだけでも称賛すべきことである。拍手を受け、光子郎は照れくさそうに笑った。


「あとは太一が決めて」
「分かった。光子郎、助かったよ。ありがとう」


 少しだけ空気が緩まった時だった。上空からパラパラ、と石屑が落ちてきて、上を見上げる。瞬間、彼らの目に毒々しい色をした無数のデジモンが目に入った。彼等は一気に子供たちのもとへと舞い降りてくる。


「ドクグモン、」
「ヴァンデモン様の城を荒らすものは、生かしちゃおけねえ!」

「させない…!」


 栞は、直ぐに祈りを込めた。
 襲いかかって来る敵に対し、直ぐに彼等の体は進化を始める。いつも以上に進化のスピードがあがったデジモンたちは、一身に守人の力を受けていた。イッカクモン、トゲモン、ガルルモンがドクグモンを抑えるために、戦闘を開始した。


「今のうちに早く!」
「分かってる!」

「チクチクボンボン!!」

「きゃあ!!」
「空が危ないっ!うー!…ピョコモン進化ァ!――ピヨモン!!マジカルファイヤー!」
「ピヨモンッ!」


「どっちなんだ…!」


 アグモンとゴマモンのカードを見つめる。


「アグモンか…ゴマモンか…!」
「太一さん早く!!」
「どっちでもいいから!!」


 真剣な瞳が、カードをじっと見つめた。どっちなんだ。どっちが俺達の世界へとつながる鍵なんだ。ぐるぐると廻る考えを必死に収束しようと目を瞑った。


―――…私は、諦めない。


 不意に、栞の声が甦った。
 彼女の願いが、祈りが、脳内に響き渡る。デジモンたちに力を与え、子供たちには優しさをくれるあの暖かい声が。


「そうはさせねえ!」


 攻撃をからくも逃れたドクグモンが天井から降り、口から発射された糸によって、デジモンたちの体を締めあげた。ギリギリと肌に食い込む糸は更に彼等の体の自由を奪うが如く、ドクグモンはその口から毒を吐きだした。

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