「この模様は…?」


 太一が呟く。彼の目の前の壁には、どこか見覚えのある模様が描かれてあった。栞がそれに気づき、ほぼ無意識に壁に触れた。


「ッ!?」


 ポウ、と灯ったのは、栞のデジヴァイスと、太一の胸元にかけられたタグだった。その勢いのまま、部屋がオレンジ色の輝きに包まれる。


「ン…?」


 まるで太陽のような模様が、すう、と太一のタグへと吸い込まれていった。彼は、それが何であるのか、なんとなく分かった。


「紋章だ…」
「何だと!?」
「紋章が手に入ったんだ!」


 わ、っと一気に子供たちの間が湧いた。タグを見てみると、中には同じような太陽のマークが埋め込まれてあった。
 太一が紋章を手に入れたことからか、長く眠っていた壁が、ようやく役割を終えたように扉を開けた。眩い光が部屋に差し込む。


「こ、ここは」
「僕たちの村からずーっとずーっと遠くにある山の中だ…」
「じゃ、あ、助かったのか…!」
「そうみたいだな、」
「よかったぁ!!」


 子供たちの顔に、笑顔が浮かんだ。已然と、頭の痛みは消えてはくれないが、先ほどよりはだいぶマシになった。栞もそっと、笑みを浮かべた。まだ兎のような赤い目であるのが痛々しくて、イヴモンは小さく俯いていた。
 そんな時、一人、太一が誇らしげな顔で紋章を見つめているのが、栞の目に入った。


「紋章だ…ついに手に入ったんだ…!コイツさえあれば、エテモンなんて怖くないぜ!」


 そう言って太一が喜ぶ姿を、その時は、栞も嬉しそうに見ていたのだった。


17/07/26 訂正
10/11/23 訂正

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