「僕、自信ない…」
「こらこら、光子郎はん!何言うてまんねん!」
「オイラは?」
「僕もまったく…全然…少しも自信がない…自信ゼロパーセント…」


 弱音ばかりを吐く子供たちを一瞥し、イヴモンは小さくため息をついた。


「…たク。そンなんデ、どうスるんだヨ…」
「っお前は進化出来ないから、他人事だろうけどさ!」
「他人事?冗談じゃナい。…最後のゲンナイの言葉、聞いテなかッたノ?」
「え?」
「正シい育て方をシなけれバ、…さっキミたいなコとになッたラ、守人が…栞が闇に堕チる、テ」


 栞は、その肩をびくりと揺らした。不安気な瞳が、イヴモンを捉える。言わなくてもいいという視線をイヴモンは無視して、荒い口調になるのを堪え、静かに続けた。


「だかラ、栞にトってモ僕ニとってモ、他人事じゃナいんダ」
「……ごめん」
「別に脅シてるワケじゃナイ。君たチは普通に、愛情を持って育てテクれればイいんダ」


 気まずくなってしまった空気に、イヴモンは苦笑してから、もうこの話はオシマイ!となるべく明るい声を出した。それでもシーンとしてしまった空気は元に戻らず、その時ちょうどボォォという大きな音が鳴ったので、みんなの意識はそちらに向いた。


「な、なんだ!?」
「ぐ、軍艦か!?」
「いえ、…豪華客船よ!」


 大きな音を出していたものは、案外目の前に迫っていた豪華客船であることが判明し、子供たちは大いに驚いた。まずどうして砂漠の中に豪華客船があるのか疑問になり、それも蜃気楼ではないかと疑った。しかし蜃気楼では作り出せない日陰を作っていることから、それが本物であることが分かり、踏みつけられないように必死で逃げた。船の方も子供たちに気づき、間一髪のところでゆるく停止した。船上にいたヌメモンが、ゆっくりと地上にいる子供たちをのぞき見た。


「ヌッ、ヌメ…!」
「ヌメモン!」

「う〜…」
「もう誰でもいい…!おい、ヌメモン!船で休ませてくれないか!?」
「ヌメ〜…」


 コロモンのバテ具合に太一は意を決してヌメモンに頼んだが、ヌメモンは断りを顔に出していた。その時、ばさりと髪をなびかせて、ミミが得意気に一歩前に踏み出した。


「ふふ、ヌメモンのことなら私に任せて!……ヌメモ〜ン、私たち疲れているの。この豪華客船で少し休ませてェ、お・ね・が・い!」


 最後のサービスとばかりにウインクを決め込めば、ヌメモンは目をハートにして、喜んで子供たちを船上に迎え入れてくれた。


17/07/26 訂正
10/04/10 - 10/11/27 訂正

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