046 見えない未来に誓った




 客船に入ったあと、栞はすぐに一つの部屋に引きこもってしまった。あれから、太一と会話することが未だ出来ていない。太一は自分が悪いのだから気にするな、と言ってくれたのだが、栞はそれでも心の荷が軽くなることはなかった。ベッドに寝転がり、顔を枕に押し付ける。枕元にはイヴモンがいるが、彼は特に何をいうわけでもなく、ただ栞の傍にいた。


―――…誰かがさ、栞の傍に、傍にいてくれたらいいなって思うんだ。


★ ★ ★




 コンコン、という音が聞こえたが、栞は体を起こすことはしなかった。その代わりにイヴモンがドアを開ければ、そこには心配そうな顔をした空が立っていた。


「空…そレにピヨモンモ…」
「ごめんなさい、いいかしら?」


 空の声が聞こえ、栞はゆっくりとだが顔を持ち上げ、そしてその存在が空だと分かると少しだけ瞳を潤ませた。


「入っていい?」
「……うん」
「ありがとう」


 優しい笑みを浮かべた空は、栞のベッドに腰をおろすと、彼女と視線が合うようにゆっくりと体を沈ませる。


「栞が悪いんじゃないって言っても、栞は納得しないのよね」
「……」
「別に今の栞を変えろっていうんじゃないのよ。でもね、物事をすべてマイナスの方向に考えていたら、栞が参っちゃうわ。栞のいいところは、優しいところ。誰にでも気遣えるところ。だから、自分のせいだって思っちゃうこともあると思うわ。…でも栞は一人じゃないの」
「…ひとり、じゃない」
「私たちが、仲間がいるじゃない。だから栞は一人じゃない。栞が困ったなら、みんなで解決しましょう。栞が間違ったら、みんなで直していきましょう。なんでも話あって、そうやって絆を築くの。仲間って、そういうものよ」


 ずっと、一人だった。だから仲間関係なんてものを、理解できなかった。
 自分を見せるのが怖かった。そうしたら、自分を知られたら、すべてが壊れてしまう気さえしていた。

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