「わた、し」
「それにね、スカルグレイモンのことは、栞だけのせいじゃないわ。…焦ってしまった心に、栞は影響されただけなのよ。だから、栞は悪くないの。仕方なかったの。…分かる?」
「……でも、」
「ほら、天気が悪くなったりすると低気圧のせいで頭痛をおこす人とかいるでしょ?それとおんなじよ」


 その言葉に、すう、と何かが溶けていく気がした。顔をあげれば、笑顔の空が栞を迎えてくれた。


「少し、一人で考えてみて。…私、ちょっとイヴモンに話があったから」
「僕、ニ?」
「ええ、ちょっとだけだから。部屋の前で話せば心配もないでしょ?」
「…まア…大丈夫?栞」


 イヴモンの心配そうな顔を見て、栞は小さく頷いた。確かに一人で考える時間も必要だった。それくらい、栞は他人との関わり合いがなかったのだ。栞が頷いたのを確認すると、空とピヨモン、それからイヴモンが部屋を出た。その時、栞の顔には、少しだけ笑顔が浮かんでいた。
 部屋の外に出ると、イヴモンはあたりを見回してから、空の方を向いた。


「…話、ッテ?」
「栞、ちゃんと眠っているのかしら」
「…エ?」
「最初に異変に気づいたのは、あなたと栞が会話している時よ。確信したのは、コロモンの村で。…元々栞は長く起きていられるタイプじゃなかった。仲良くなった時に、そういう風に聞いてるから。おかしいと思ったわ」


 イヴモンは、一瞬だけうろたえ、それから悲しげに顔をふせた。
 それを見逃す空ではなく、言いたくなかったらいいの、と付け足すが、イヴモンはおもむろに口を開いた。


「…みんナに、言っタ方がいいノかもしレないケド」
「うん、」
「栞は、守人だカラ。守人は、デジタルワールドを守るタめにアル。人間ジゃなイ。…眠りハ、必要とハしなイのサ。ドんな時でモ、守らなキャいけナいカラ」
「そんな…」


 空は、口を手のひらで覆った。覚悟はしていたが、そのようなことをイヴモンの口から聞かされると、受け入れがたいものもあった。

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