「何やってるの、栞!サボテンはとげだらけなのよ!?」
「…で、でも、」
「刺さったら、痛いのよ!」
空に諭されて、栞はおずおずと頷いた。
今までの感覚で行くと、ここに間違いなく。
「う、ん?」
サボテンの変化に真っ先に気づいたのは丈だった。メガネをぐいっとあげて、目を凝らした。遥か上になるのがら、サボテンの上に、先ほどまでなかったピンク色の花が膨らんでいる。
「…あれは」
栞がつぶやいた。
あのピンクの花の中に。
まるで、ずっと待っていたかのように、花開く。
その花の上に、紋章が刻まれた石板があらわれた。
「『純真』の紋章、だ」
「純真…?」
紋章は、まるで当たり前のように、ミミの胸元へと消えた。ミミは急いで光った胸元を、タグを取り出すと、そこには前からあったかのように紋章が嵌めこまれてあった。
「これがゲンナイさんが言っていたタグと紋章が惹かれあうってことなのね…」
「……」
「ミミ、ちゃん…?」
ミミは紋章を悲しそうに見つめていた。栞がその肩に触れると、ミミは栞を振り返り、ほとんど泣きそうな顔をした。
「ほしくなかったのに…」
「え…?」
「私、パルモンを正しく育てられるのかしら…」
「ミ、ミミ…」
誰も、何も言えなかった。
ただ眩しい夕日だけが、子供たちと、サボテンを照らし続けた。
17/07/26 訂正
10/04/22 - 10/11/27 訂正
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