「アいつは鬱陶しいクらイ口うルさいケド、悪いヤツじゃナいヨ」
「…まあ、黒いケーブルもついてないみたいだしな」
「いいじゃない!デジモンたちの正しい育て方が分からないのは事実だし、それでみんなで合宿すると思えば楽しいわよ、きっと!」


 紋章を手に入れたばかりのミミは、不安で仕方なかった。頼みの綱であったゲンナイは子供たちを混乱させることしか言わず、そしてすぐに消えてしまった。少しでもいいから、正しく育てるためのヒントがほしかったのだ。高らかに賛成したのはそのためだった。


「…太一はどうなんだ?」


 ミミ曰くの合宿というもので、おそらく一番厳しいのは太一であるのは明白であった。気に掛けるようにヤマトが問えば、案外、太一はあっけらかんとした表情をしていた。


「いいじゃん、行こうぜ。面白そうじゃんか!」
「じゃあ決まりだね」

「うー!何をぐずぐずしてるッピ!早く来るッピー!」

「…本当に、口うるさいですね…」
「可愛い、んだけどね」


 くるんとした愛らしい瞳をきっと釣り上げる姿すら可愛いとは罪だろう。栞は先ほどから抱きしめたい衝動にかられていたが、なんとかしてそれを堪える。我慢するために、イヴモンをぎゅっと抱きしめた。イヴモンは嫌がることなく、おとなしく栞に抱きしめられていた。      


17/07/26 訂正
10/05/07 - 10/11/27 訂正


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