「グレイモン!」

「アグモンが、進化した…」
「グレイモンだっ!!」


 オレンジ色の巨体な怪獣が、森の中に姿を見せる。勇敢にも、グレイモンはティラノモンの吐く炎の塊の前へと飛び出て、己の炎の塊で相殺した。
 わっと結界の中で、子供たちが湧く。駆け寄ってきた太一の顔にも、すっきりとした笑みが浮かんでいた。ピッコロモンの視線が栞へ向くと、彼女の体は、更に光を帯びた。もう大丈夫だ。ピッコロモンはそっと結界を解くと、子供たちと同じようにグレイモンを見つめた。
 グレイモンは、己の中に、栞の光を感じた。いい方向へと、導いてくれる光が、心の中で、ふわりと広がる。進化したことにより増幅した力と、暖かい心。―――できる。
 ぐわし、とティラノモンの脇に手をいれ、そのままの勢いで振り上げる。バタバタと手足を動かすせいで、ティラノモンを繋ぐ黒いケーブルがぶちぶちと音をたてて切れていった。もう一度だけ高くティラノモンの体を持ち上げる。すべてのケーブルが、切れた。ティラノモンは、咆哮とともに消えていった。


「やった!!」


 わっという歓声が、子供たちを包みこんだ。デジモンも、子供たちも、みんながガッツポーズをとった。久しぶりに見た、彼らの輝いた笑顔。その中で、ほっとしたように頬を緩ませたのは栞だった。


「よくやったッピ、太一、アグモン。そして、守人」


 わが子を見守るような暖かい視線で、ピッコロモンは子供たちを見やる。彼の視線に気づいた栞は、はっとしてから、ピッコロモンのもとへと駆けよる。その間、子供たちは太一を囲み、よくやったと褒め称えた。


「ピッコロモン、」
「守人。どうしたッピ?」
「……」


 口を一回閉じ、何かを考えるように、いや求めるように、栞はピッコロモンを見た。愛らしい大きな瞳をくるんと輝かせ、ピッコロモンは彼女の手のひらに降り立った。イヴモンとは違う毛質、やわらかさに、心がほっとするのを感じる。

back next

ALICE+