本当、突然来るもんだからびっくりした。あの時は俺も冷静を装っていたけど丸井がああなるのも無理はない。何の連絡もなしに突如、遅刻してきた赤也と一緒にコートにきたのだから。

いつも通り名前は自由人だからほぼ手ぶらで神奈川に来たみたい。てか、財布だけって頭おかしいんじゃないかこいつ。そもそも実家の鍵を忘れる時点で馬鹿だし今日の夜をどう過ごすかも考えていなかったくせになんとかなると思ってるんだから、とんだお気楽者だよ。人に頼るのは悪くない事だけど名前の場合頼りすぎ。ていうか、なんとかなるって思いすぎ。そろそろ気づかせてやらなきゃって思って数年…知らない間に大阪に行ってたし。俺にはもう手に負えないんだよね。






「出たよー」


シャワーから上がったので自分の部屋に戻れば名前は俺のベッドの上で寝ている様だった。横に無造作に置かれた何冊かの漫画。本当気を使う事をしないな。嫌な気は全くしないけどね。



「名前ー、俺のスウェットとか貸すからさ、着替えたら?」




一瞬の出来事だから何が起きたかわからないけど意外にもすぐ頭が回転してくれた。
ベッドの横に行き名前の近くに腰をおろした途端、ガッと掴まれる後頭部と塞がれる口。



「ん…ありがと、精市」



ほんの数秒だけですぐに離された。その一瞬だけでも俺の脳内は溶けたようになるし心臓だってバクバクする。名前は本当に自由人でズルい奴だよ。こういう時ばっか俺の事を名前で呼ぶんだ。




131007





まえつぎ




もくじ

勝ち気なエリオット