『……へぇ、本当に隠しステージあった。すごい!んまー、じゃあ、キリも良いし今日はこの辺で。無気力人間、猫がお送りしました!ご視聴いつもありがとうございます』


言い終えて、一息。画面の前には"お迎えにあがります"というシンプルな文字に、ドキリと嫌なことを思い出す。最近失踪ゲームだなんて噂が広まっていて、視聴者さんからやってみてくれと多くのリクエストが来たからプレイしてみたものの……。画面の文字を見つめて小さく息を吐いて頭を振った、いやいや考えすぎに決まってるホラー映画じゃあるまいし。

とりあえずお風呂でも入って気分を変えようじゃないか、今日はかなりやり込みすぎた。眠たいし、さっさと終わらせて寝なきゃ明日も仕事だし、しんどい―――


―――ふわりと、風が吹くいて心地よい気温が頬を撫でる。目をつぶっているのに、明るさが染み込んでくる……あー、あれ、いつの間に寝たんだっけ?……なんで、こんな…涼し、ッ


『……ッ!?!』


いつもと違う気温、いつもと違う全ての触り心地、いつもと違う…いつもとは、何もかもが一致しない、周りの景色。


『なによ、これ……』


眩しさに開いた目に飛び込んできた景色は、私の部屋の見慣れた天井…ではなく、眼球が痛いくらいに輝く太陽、森林と言っても過言じゃない大自然、心境とは裏腹な気持ちのいい風が、長くも短くもない私の髪を揺らした。


どれ程、呆然としていたのか分からない。なんでだどうしてだと昨夜の記憶を必死に手繰り寄せるが、こんなマイナスイオン豊富な森に来た記憶は微塵もない訳で頭を抱える。


『いや、いやいや!意味分かんないよ何処なのよこ…っ!!』


叫び出そうとした言葉はヒュッと喉につっかえたかのように止まる。後ろから聞こえた音に肩が跳ね、心臓が何倍もの速さで脈を打つ。ゆっくりと腕を下ろし、震える膝に鞭を打って、なるべく音を立てないように立ち上がる。

また一つ、ガサ。敏感になった神経は、異常なほどに反応してしまう。こんな訳の分からない場所で姿の見えない何かと対峙しているというだで、底知れぬ恐怖が私を襲う。

隠れてしまうか?いや、もう間に合わない。人かもしれない、何が来るのかを見てから逃げよう。足の速さには少し、ほんの少しだけ自信がある。


『(それも熊とか狼とかなら、即お陀仏だけどね)』


嫌な汗で湿った手に力を込める。背中からつつ、と腰にかけてひとすじの汗が零れ、睨むように凝視していた茂みの奥、ガサガサと音が大きくなるにつれて私の心臓も大きく速く響く。


『………!!ッ、よか、た。ひ、と…だ…』




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