「コナンくーーん!あーいたーいよー!!!」

もう仕事なんて辞めてやる。辞めてやるんだ。
毎日毎日サービス残業な上にエクストリーム出勤はいいぞ、だからお前もしろとか何本当馬鹿なこと言ってんの????エクストリームしてんのなんか定時上がりの仕事しねえ上役しかいねえよ。みんな残業でヒィヒィ泣いてんだよ。自分じゃなくてもっと下を甘やかせや馬鹿野郎。
泣きそうになりながらも今日も今日とて!サビ残頑張って来ました!誰か褒めて!出来たらコナンくん!むしろコナンくんに頭撫でられたい!!!!がんばったね、えらいねって癒されたい本当誰かコナン連れてきてほしい。
そんな願望を持ちながら会社を後にしたのは22時を回った時。スマートフォンを操作して溜まっていたメールを1つずつ確認して返信をしていく。そんな中にポツンとコナンくんの文字。

「いつも、お疲れ様、今度、ポアロで、ご飯しよ…え、なにこれ天使かな???」

コナンくんからの可愛いお誘いメールにこの疲れた心は一気に幸せなものへと変わっていくのがわかる。

「遅い時間に、ごめんね、今週の、土曜日、ポアロでランチ、しませんか。…なんか軽いノリで誘えてない感。」


自宅最寄駅の改札を出てカツコツとヒールを鳴らしながら帰路を急ぐ。
もう、季節は冬。吐く息はとても白く吸い込んだ空気で肺が少し痛くなる。

仕事を辞めてやるが口癖になりつつある自分にため息ひとつ。


「自分自身にスキルがなさ過ぎて悲しくなる…」

スキルさえあれば転職なんて簡単なんだろうなあ。
自宅に向かう途中にあるコンビニに寄って夜ご飯と明日の朝ごはんを選ぶためにウロウロ店内を歩きお腹に優しそうなものを探すがもう既に夜中な為かあっさりしたものは殆どなくどれも結構お腹にどっしりと来そうなものばかり。
サラダパスタが食べたかったなあ、と思うもそれが棚にひとつもないので渋々そこを離れパンコーナーに移動する。も、そここそなにも無い。


「か、かなしー…」

もういいや、バー状の栄養補助食品数本と飲料水を掴んでレジに並ぶ。
明日のお昼はなに食べようかなぁ。なんて楽しみを作り自分の手の中にある補助食品を見てまたため息。

いつまでもこんな生活で良いのだろうか。

お待ちのお客様こちらへどうぞ、そう言われ空いたレジに向かいお金を払う。はずが手がもつれ数枚小銭が床に落ちる。ああ、やってしまった。面倒くさい。
小さく謝りその場にしゃがんで小銭を拾う。

「はい、どうぞ。」

「えっあ、ありがとうござい、ます…」

「いえ。お気をつけて。」

差し出された手には10円玉。その手を辿り顔を見れば眼鏡をかけたイケメンが。あまりの顔の作りの良さに見惚れていたが、頭上から店員さんが大丈夫ですか?と声をかけきたので我に帰り再度お礼を伝え支払いを済ませた。






「コナンくんめちゃんこ会いたかった大好き連れて帰りたい大好き。」

「なまえさん大丈夫?すごい疲れてるんだね。」

「コナンくんを養子に貰いたい…役所で働いてる友達に手続きの方法聞いてこようかな…」

「ねえ待って落ち着いて。」

今日は土曜日。
待ちに待った、本当に待ちに待ったコナンくんとのランチデート(in ポアロ)
私は今日この日の為にただひたすらに苦手な上司からのパワハラにも耐え仕事しない後輩の分まで頑張って仕事をこなしたのだ。

「コナンくんをお持ち帰りする権利が欲しい…」

「ねえボクはなまえさんのメンタルが心配だよ…仕事辛いの??」

「つらくない。つらくないもん。」

「顔と言葉がマッチしてないよ?辛いなら無理しなけりゃいいのに、なんでなまえさんはそんなに頑張るのさ」

「だって頑張ればコナンくんが褒めてくれるからぁ…」

「あはは、なにそれ。なまえさんは本当おかしな人だね。」


オレンジジュースの入ったグラスを小さな両手で支えてクスクス笑うコナンくん。
ああ、本当お仕事頑張ってよかったなあ。これはたから見たらお巡りさん呼ばれるやつかな。

お客さんが私たち以外いない為、安室さんが少し暇そうに頬杖ついてカウンターからこちらを見てくる。

「安室さんって何しても絵になるね。あれがイケメン効果。」

「あ、そういえばさ、なまえさん最近ちゃんとご飯食べてるの?」

「食べてるよ?」

「本当に?この前昴さんがなまえさんコンビニで見たって。その時買ってたの栄養補助食品とお水だけだったって言ってたけどそれって食べてるうちに入るの?」

「待ってすばるさんって誰??」


何それそんな情報どこで入ってくるの、めちゃんこ恥ずかしいじゃん。
栄養補助食品なんてほぼ毎日買ってるし食べてる、コンビニで見たって言われてもどの店舗で見たんだ。てか私は知らないけどむこうは知ってるの?え、なにそれ怖い。


「すばるさんってどんな人?」

「んっとね、眼鏡かけてて、ピンクかかった髪の毛してるんだけど」

「あ!この前小銭拾ってもらった人だ!コナンくんはイケメンさんとよく出会うし、仲良いよね。その運分けて欲しい。」

「出会おうと思って出会ってるわけじゃないよ〜!」


何言ってんだこいつって顔された気がした。


「で、ちゃんと食べてるの?」

小首を傾げて目が零れ落ちるんじゃないかってくらい目を開け身を乗り出して聞いてくるコナンくんに再度同じ答えを返して注文したカフェオレを一口。


「そっか、ならいいんだ!あんまり無理しちゃダメだよ?」

「うわー!コナンくん今のかんわいー!!つれてかえりたーーい!!」


はいはい、笑いながら軽く交わすコナンくんに頭を撫でられて思うのはやはりコナンくんを養子に貰いたいというそんな思いだけだった。






(江戸川なまえも良いかもしれないね)(ねえ本当仕事辞めたら?)




.

- 13 -
←前 次→