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お風呂上がりのスクアーロが髪の毛をタオルで水気を切っている中、ケーキをドドンとスクアーロの目の前に出すと「一体何事だ」と言った驚いた表情で此方を見てくる。
そんな彼にニカッと笑い壁を指差すと大きく見開いている切れ長の目が一つ瞬きを落とす。眉をひそめるスクアーロが壁に掛かっているカレンダーをチラリと見遣る。
「誕生日、スクアーロの誕生日!」
「もう夜だけどなぁ…」
「お互い仕事だったから仕方ないじゃん。それよりもね、この日を毎年待ちわびてるんだよ。」
「ハッ。待ったって何もねぇぞぉ」
俺が歳を取るだけだ、そう笑う彼に私も顔が緩みニヘラと笑うと急に頬を抓られる。
「にゃ、にゃにふるの…」
「マヌケ顔だな」
手を離されたかと思うと今度は頭を撫で、そのまま髪に手を滑らせ、そこにキスを一つ落とす。
スクアーロがこういうのをする事は滅多に無い為、慣れない事をされた私はきっと顔が真っ赤になってるんだろうな。
と言うかこんなに近くでまじまじと彼の顔を見ると嫌でも顔に熱がこもり始めるのが分かってしまい、つい手で顔を隠してしまう。
「う゛ぉおい、何隠してんだァ?」
私よりまつ毛長いし、肌の調子良いし、目の色も綺麗だし、唇だって男のくせに荒れてないし、パーツが整い過ぎていてその顔で私の顔を覗くこの男が憎らしい。
隠していた手は簡単に外されて視界にはスクアーロのかっこいい顔。
「スクアーロかっこよ過ぎて直視したくない…」
「う゛ぉおいなんだぁ?それはよぉ。毎日俺の顔見てんじゃねえかよ」
「こんな間近では見てない」
「毎晩隣で寝てんじゃねえか」
「それとこれとは違うじゃん!」
そうだ、スクアーロと恋人同士になってから中々の早さで同棲を始めてしまい、当初は目を覚ましたらスクアーロの綺麗な顔が隣にあった時は本当に心臓止まるかと思ったのを今でも覚えている。
だがそれは眠っているからまだ良かったが今は彼は起きていてしっかりと視線が合う。こんなの恥ずかしいという気持ちしか私の頭の中にはない。
やめてくれと掴まれた手を振り解こうとするが叶う事なくその手を引かれて彼の胸に飛び込む形に。
「誕生日なんて別になんてこたぁねえがよ、なまえに毎年祝ってもらうのは俺は嬉しいとは思ってるんだがなぁ…」
ごにょごにょと徐々に声が小さくなっていくスクアーロに「かわいいね」と言うと「うるせえ」と抱きしめられる腕に少し力が加わる。
「ねえ、スクアーロ。」
「なんだぁ?」
「来年も再来年も、その先もずっと祝わせてね」
「俺の誕生日祝いたいなんて言うやつはなまえしかいねぇからなぁ」
「ふふっ、スクアーロ大好き。お誕生日おめでとう。」
言うと同時に彼の背中に腕を回すと「俺もだ」と顔をようやく見合わせて笑い、小さなリップ音とともに心が満たされる。
「私、幸せだなぁ。」
「奇遇だなぁ、俺もだ。」
絡んだ視線に、また一つ部屋に軽いリップ音が小さく響いた。
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