ここはどこ、わたしはだれ?
私が言ってあはは、と笑ってくれる友達がいたら良かったのに今はそんな友達もいなくてわたしの周りにいるのは忍者の格好をしたよく分からない人たち。
「あの、あなた方は…」
見るからにわたしが先程までいたところではない。草木が生い茂り鳥たちが歌ってる。
「またか、おい、連れていくぞ」
「あっあの!」
「お前は学園長先生に伝えろ」
「は、話を聞いてくださ、」
「待て」
数人の忍者に囲まれ腕を掴み何処かへ行くのか引っ張られる。
一人の忍者が縄を取りだし腕を縛り始めちょっとこれはまずいのではないか。脳が警鐘を鳴らす。慌てて逃れようと暴れてみるけれど掴まれた腕はビクともしない。
「待って、お願い待ってください!」
「ちょっと黙れ」
「なんでもします!なんでもしますからっ!」
「……」
「あの、聞いてください!私、どうしても行かなきゃ行けないところがあって、今日は妹の誕生日で、ほらっケーキ!妹の為に美味しいケーキ屋さん探してオーダーしたんです!早く帰って妹の驚く顔が見たくて、あの、家族が待ってるんですっ!本当なんです、あの、私、帰りたいんです、今財布に入ってる有り金ならあげます、家族の元に帰してください。ほ、本当にお願いします…!」
頭の中が真っ白なのに私の口からはスラスラと出てくる言葉に内心よく言えたものだなと感心してしまう。けれど目の前の忍者は私のそんな訴えも何一つ聞く耳を持ってはくれずギロリと睨み持っていたケーキの白い箱を、殴り付けた。
ああ、凄く人気でなかなか予約だって取れないケーキ屋さんのケーキだったし高かったのに。スローモーションで落ちていくソレに追い打ちをかけるようにその上から足で更にぐしゃりと踏み潰される。
なんて、惨め。
これではもう食べられないではないか。妹の喜ぶ顔が見たかったのに、何故こんな目に遭わなければならないのだろうか。
未だケーキの上に乗っかる足を目線で辿ればとても個性的な髪を持った忍者が私に向かって冷たい笑みをこぼしていた。
***
意識がぶっつり切れていたようで気付いたら手足を縛られて薄暗い石が敷き詰められた部屋に捨て置かれていた。
きょろり、とあたりを見回しても何も今の状況が変わるわけもないが静かなこの空間では何かせずには居られない。横たわった不自由な体を何とか起こし、ここはどこだろうと本気で考えてみたけどやっぱり答えなんて出てこなくてそんなことより早く家帰らなきゃ家族が待ってるのに。
「どなたかいませんか…」
分かっていたけどシーン、と静まり返る。まるでここだけ異質な空間かのよう。
どうしよう、これはまさか誘拐だろうか。でもこのご時世に忍者の格好で行うのだろうか。普通誘拐は目立たない格好をして行うのでは無いか。忍者の格好だなんて外国の人が嬉々としてしまう。絶対目立つ。
頭が悪いなりに考えてはみるけれど答えなんて見つからない。帰りたいなあ、小さく溜め息混じりにそう呟いたと同時に開かれた扉。
その切り取られた夜の空に浮かぶ月と夜風に靡く長い綺麗な髪が私の視界に入ってきた。
「ついてこい」
「……あの、」
「ちっ」
ついて行きたくても両手足を縛られて身動きが取れない私に気付き小さく舌打ちをされた思った。その直ぐ後にぶつん、と足を拘束していた縄が床に落ちる。
足が自由になったのを遠目で確認すると綺麗なストレートの髪の毛を靡かせて扉から出ていくのを見つめ、少し遅れてその人に慌ててついていった。もしかして私を助けてくれるのだろうか。小さな希望にホッとする。
梟が不気味に鳴く、そんな夜、古い建物をぐるりと囲む塀にここ絶対お金持ちだと思った。促されるままについていくが中々外に出られる気配がない。むしろどんどん奥に連れられている気がする、進んでいくと何故か森が見えてきた。こんなところになんで?と思うがさっきから前を歩く人が怒ってるみたいで話し掛けようにも関わるなオーラを滲み出してる。
「……ついたぞ」
「え、ここ…」
辺りを見回し、木々しかないここに私を連れてきてどうするつもりなんだろうか。
流石に理解が出来なくて話し掛けようとしたら人が増えてた。
「、え?あ、の」
「貴様には死んでもらう」
「え」
スラリと抜かれる刀が月光に照らされ綺麗に光る。
それが合図かのように回りにいた人が何かを持って構えている。
「な、なんでわ、私が…!や、やめてッ!」
少しずつ後退りをするとヒュン、と言う音がして遅れて頬を何かが伝いそれに触れ、視界に入れればそれは真っ赤な、血。そうか、彼らは本気なのだ。
ぞわりと鳥肌が立ち冷や汗が流れる。逃げなきゃ、逃げなきゃ殺される。
「っ、い、やだっ!!」
元来た方向へ思いきり走り出す、こんな変な奴等になんで殺されなきゃなんないの、逃げなきゃ。
「えっ!?、うっ、ぐ…!」
いきなり巻き付く鎖に足を取られ呆気なく私は捕まり、髪の毛をぐい、とおもいきり掴まれ上を向かされる。首元には刀。
涙が流れ言葉は出ない、その代わりに歯はガチガチとなり続け死にたくない、と心で必死に叫び続けた。
「言いたい事があれば聞いてやるが?」
月の明かりで私の顔がよく見えるだろう、きっと今の私はみっともない表情に違いない。
震える私にそう言うけれど、刀が振り下ろされる瞬間だった。
「じゃあな、天女サマ。」
(ごとん、)(音を立てて頭に衝撃がきた)(首のない体は)(ゆっくりと倒れ)(真っ赤に染まった。)
忍者は笑う、ただそれだけ。
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