正直こんな事なんてしたくなかった。
確かに私は学園の生徒さんから見たら歳をくってはいるけれど、これでも典型的な女の子ではあると思うので、今のこの状況が本当に理解出来ないし、したくない。


「ジュンイチくーん…」


とても空が青く、日差しもある。
これはどう見てもピクニック日和でそんなお日様の下、私は学園内のお庭に這いつくばって辺りを見回す。

見た事も無い彼の名前を呼ぶが一向にその存在は現れてはくれない、それよりも先ほども言いましたが私は典型的な女の子です。最初嫌々ながらも捜索協力を求められた際、その名を伝えられ誰もが人間の捜索かと思うじゃないですか。
ジュンイチくんだなんて人間のお名前だと思うじゃないですか。地面に這いつくばってみんなが捜しているのを見て、疑問が出てきてしまったのだ。

「ジュンイチは孫兵のペットで毒サソリですよ」

そんな事聞いてない、私そういうの本当無理。


「毒サソリっていうくらいだし、やっぱり噛まれたりなんかしたら…」

「死にますね」

「私虫とかそういうの苦手で、」

「だからと言って困ってる人を無視するのは如何なものかと思います。」


最近本当理不尽にも程があると思うほどに学園の生徒さんから無理難題を押し付けられたりし始めた。
出来る限りなら私だって協力したいと本当に思うけれどそんな命の危機に陥るかもしれない事に一般人よりも体力のないか弱い女がそんな事に身を投じるだろうか。

生きてきた中でそんな話、私は聞いた事がありません。

チラリと横を向くと萌黄色の忍者さんは必死になって草を掻き分けてジュンイチくんの名前を呼ぶ。

羨ましいと思ってしまう。
ジュンイチくんはこんなにも愛されてる。
比べて何になるかと聞かれても答えられないが、どうしても今の私と彼を比べてしまう。

人間では無いのに彼は私以上に愛される。

私は誰に愛されるのか。
愛されなくてもいい、ただ、私という存在を認めてほしい。


「っ、ひぃ!」

「なんですか、ってジュンイチ!」


手探りで探していると微かに動く何かに恐る恐るその生い茂る草を掻き分けていくと、そこには今萌黄の少年が恋い焦がれたサソリの姿。

毒サソリと彼は言っていた。のに、彼は気にもとめずにジュンイチくんに走り寄りすくい上げて頬ずりをして帰りを喜んだ。

そんな彼らを見ていると後ろにボサボサの髪をした少年が立っていてこちらをジッと見てくる。


「あ、その、それでは…」

「名前さんって言いましたっけ。」

「なんで私の名前…」

「…一応上級生みんな貴女の名前は知っています。ただ貴女という存在を認める事が出来ないから名前を呼ばないだけです。どうせ、みんな同じだから。」

「そ、そう…」

「俺は竹谷八左ヱ門。善法寺先輩や雷蔵にも言われてると思うけど自分の立場は弁えて行動した方がいい。……その、もし、何か辛い事があるなら、俺が話を聞いてやらなくも、ない。」

「たけざえもんくん…」

「竹谷!俺は竹谷八左ヱ門!じゃあな!」

「えっあ、ごめんね!ありがとう!」


音も無くその場を去る竹谷くんになんだか心が暖かくなった気がした。


(竹谷先輩狙いですか)(なんでそうなるんですか…)(女は分かりませんからね)