私の視界は揺れて歪んで見えた。
先程ご飯を終えて吉野先生の元へ駆けていった瞬間地面に穴が開いて真っ逆さまに落ちてしまった。視界いっぱいだった綺麗な空が今は丸く切り取られた蒼が私の心に深く突き刺さり、体にはざっくり竹槍が刺さっている。
ここの子達はやる事がえぐい。痛みを通り越して睡魔が襲ってくることなんてザラだ。そしてリセットされる、これの繰り返し。
何が気に食わないのだろうか、何故私がこんな目に。何度だって思ってしまう。
痛くない。そう言い聞かせて泣かないように歯を食いしばっていたらこの落とし穴掘ったんだろう紫の髪の毛の男の子が穴から覗く。


「だーいせーこー」


軽くピースしてこちらを見てくる彼は私を助ける気なんて更々ない様子でジッと血が溢れて止まらない私を凝視するだけ。
なんの感情も篭っていないその視線にゾクリと震えてしまう。


「あ、の…」

「凄い血が溢れてますね」

「たすけ、て…くだ、さ…」

「死ぬんですか?」

「…し、にた…く、な」

「……」


体が徐々に冷たくなる、ゆっくり死んでいくのってこんな感じなのか、いつもは急所を狙われ確実に即死が多かったのだけれど失血死というのはこうも恐怖を感じてしまうものなのか。

頭がクラリ。

死に逝く人間を見下ろす彼がにこりと笑うのが視界の端に映り悔しくなった。死にたくないのに、死にたくないのに。
でも、今死ぬなら今度こそは死にたい、だって生き返ってもまた私は殺される。


「貴女は死なない」

「貴女は僕の大切なおもちゃなんですから。」


なんて絶望。心地の良い声音のくせに吐く言葉は無慈悲な神の様な暴言。ひどい、りふじんだ、思う事はたくさんある。けれどももう考えることは不可能なようだ、我慢していた涙が暖かさと共に一筋流れたと感じた瞬間意識が今、ぷつり、と。


何度だって殺してやる。


遠くの方で何かが聞こえた気がした。