02


キラリ、綺麗な石の欠片を河原で見つけた。それがいけなかったのだろう、まさかこの欠片を拾ったせいで自分がこんな目に遭うだなんて。

銀髪のお兄さんに助けられてから色々考えてみた結果、かなりの自論だが着物を着ていたような気がするのでもしかしてもしかしてのタイムスリップしてしまったのだろうか。うそでしょ、困る。スマホが使えないだなんて現代人には地獄だ。いや、そんな事より空腹を満たすために近くの村まで行くのが利口。だがここがどこで一体どうすれば村に出られるのか全く分からなかった。そのため再び森に入り木の実や何か食べられるものを探した。


「…何か、惨めじゃない?」


木の実を拾いながらもう溜め息しか出てこない。本当ここ何処だよ。時折聞こえる茂みからの物音に怯えながらの食料集めにそろそろ嫌気がさしたと同時に感じられた喉の乾き。森を徘徊していればきっと小川にでもつくだろう、そう思い再び歩みを進めることにしたのだがこれが後悔することになるとは誰が分かるだろうか。



***



「あ、あった!」

思いの外早く小川を見つける事に成功。ダッシュで川に近付き水をすくい上げ口に入れ飲み込む。カラカラだった喉が潤い、満たされる。今まで色んな飲み物を飲んできたが初めて水が美味しいと感じられた瞬間だった。
足を水につけて生を噛み締め休憩をしていたら視界の端で小さく光るものを見つけた。興味本位で近づいて広いあげると小さな硝子のような破片だった。小さな子供のように硝子の破片とかキラキラするものが好きな私は迷わず服のポケットにしまい込んだ。これが後々悲劇を舞い込むだなんで誰が知ろうか。

暫くじっとしてこれからの事を考える。まずここは私の知ってる場所じゃない。絶対はるか昔、そして日本じゃない。あんな化け物絶対日本にいないもん。


「意味不明過ぎる。」


ため息をつき岩に腰掛けて空を眺める。すっきりとした空とは対称的に私の心の空はどんより曇って今にも雨が降りそうだ。その時だった。森の奥からまたしてもガサガサと聞こえだしたのは。咄嗟に岩陰に隠れて様子を伺うと出てきたのは腰に毛皮を巻いたイケメン青年。彼はキョロキョロ辺りを見回して匂いを嗅いでいた。
鼻が発達しているのだろうか。ということはもしかしての化け物?人間の形した化け物?やだやだやだ。なんてたちが悪いんだろうか、もう本当つくづく運がない。ぶっちゃけこの人からは逃げられないような気がしてならない。気付かれないようにゆっくり音を立てないように後退をしていった。


***


「ここまで来たら大丈夫かな」

「何がだ?」

「あの人から逃げてきたんだよね」

「小川のか?」

「そうそ、う…………うそん…」



青年を視界に捉え、あまり出来のよろしくないがそれなりに危機感と言うものを備え持った頭が警鐘をならしてからかなり頑張って走って離れたのに。あそこからかなり離れたのに何でもうこの人私の真横に立ってんの。


「お前、いい匂いだな。…美味そうだ」


ニヤリと笑うその青年の口から覗いた牙に血の気が引いた。え。馬鹿じゃないの。私なんか食べたって不味いに決まってるじゃん。いい匂いって言われてちょっと嬉しかったのにそっちの意味って知って悲しくなった。


「いや美味しくないです。不味いです。ですから見逃してください。本当お願いします。」

「無理。」

「じゃあさようなら。」

「四魂の欠片も持ってる餌なんて最高じゃねえか。」


ガシッ。
音をつけるならこれだろう、彼はニヤリと笑い腕を掴み横抱きにして走り出した。しかも超早い。


「待って待って待ってぇえぇ゛ええ!」


あまりの速さに頭や目がついていけず気持ち悪さに胃から何かが逆流してきそう。


「お前、そういえばかごめと同じような着物着てるな。」

「だ、だれっ…ぞれぇ……っ」

「俺の女だ」

「あ゛っ、もう…げん、か…い゛……」

「うわっ汚ぇっ!お前何すんだよ!」


嘔吐物が喉まで来てしまっては仕方ない、あとは吐き出すしかもう方法は無かったのだから。顔面蒼白でうえうえ言っていたらドサリとかなり乱暴に落とされその衝撃で私は腰を負傷した。元凶がこの青年だと言うのに大丈夫かと腰をさすってくれ、何て優しいのだろうと思ったが「餌だしな」とスパンと言葉のナイフを放たれ、ですよねえ…と泣きそうになった。私の人生もう幕を閉めるんだね。いいよ、別に悔いは残ってない筈だから。はずだから!!
それでもやっぱり、脳裏に家族がよぎるんだよなあ。