気付けば私は四年長屋の、しかも自分の部屋の前で立っていた。

日は暮れ始め烏が鳴く。そして体育委員会だったのかヨレヨレの滝が私を捕まえ夕餉を摂るため食堂に足早に歩く。
過ぎていく景色をボウ、と眺めながら引かれる腕はなされるがまま。


「まだ夕餉を摂っていないなんて、全く…そんなに穴掘りに没頭していたのか?」

「んー…さあ?」

「お前な…」


食堂についてメニューを選ぶ私に先程から溜め息しかつかない滝は自分の自慢の前髪をさらり、と撫でた。けれど汗や土で汚れた髪の毛はいつもみたいに綺麗に纏まりはせずフニャリとカッコ悪く垂れた。こんな事言ったら多分怒られるから言わないけど。
隣で前髪を弄りながら早くしろ、と急かしながらも待ってくれる滝に心ではありがとう、と呟く。

今日はうどんにしよう。

未だ悩んでいるのか?と眉間にシワを寄せる滝の横をすり抜けておばちゃんに注文をする。後ろで滝がギャイギャイ騒いでたけど無視して出されたトレイを持って席についた。


「喜八郎、これはなんだ?」

「んー?なにが?」


滝を待たずにズゾゾ、と麺を啜る私の結わえてある髪の毛を触り何かを差し出してきた。


「…なにこれ?」

「お前の髪の毛に付いていたんだよ」

「滝ってばそんな悪戯しなくても良いのに」

「んなっ!」


私ではないっ!そう顔を赤くして私に食い付く滝から視線を外して滝が差し出してきたソレに向ける。人形の、紙。滝がこんなもの持ってるわけないし、しかもこんな悪戯するわけがない。これは以前書で読んだ式、と言うものの類いだろうか。
けれど一体何故、ジッと見つめていると何処からかフワリと甘い香りがした。

「?」

辺りを見回してもそんな匂いを放つ物も者もいない。放つ者がいたらそれは忍としては失格であろう、キョロ、と最後視線だけ泳がせると背後から白い手が現れ、式を覆い被さるように机に触れるとソレは音もなく式と共に消えた。






(喜八郎、どうした?)(……)(喜八郎?)

滝夜叉丸は気付いていない