01
その日もいつも通りの平凡な毎日が始まると思っていた。何の変哲もない、いつも通りが。
「オギャー!!オギャー!」
「相変わらずなんて可愛らしい女の子アマス!」
「本当だえ、さすがわちきの娘だえ!」
全く人が寝てるそばでうるさいったらありゃしない。薄眼を開いて一言言ってやろうと私は声を出す。
「オギャー!」
あ、あれ?オギャー?私め、なにを血迷った。もしやピーターパン症候群ってやつだろうか。いやいや、だけど私はまだピチピチの17歳。華のJKぞ。
「赤ん坊の頃からこんなに可愛いんじゃ将来が楽しみだえ」
なんだこの究極にブッサイクなおやじは。うわああ、ブサイクで脂ぎった顔の男が近づいてきた!!全身で近づくなと体を揺さぶると今度は女の声がした。
「エレナちゃんはお転婆アマスね」
「女の子はこれぐらいがちょうどいいんだえ。エレナは世界一可愛いえ!」
な、なに!?なんでこの二人は私の名前を知っているの!?しかも私が可愛いだなんて…目がおかしいのではないかこのブサイクは!!
いい加減夢なら覚めてくれ、と起き上がろうとした瞬間、ものすごい違和感が体を襲った。
グラッ
「危ないアマス!!」
ガシッ!
「安心するえ、エレナはわちきが命に代えてでも守ってやるえ」
起き上がろうとして倒れそうになる私を抱き上げたままブサイクが誇らしげな顔をしてそう言った。ああ、ただしイケメンに限るってこういう時に使うのか。
それよりだ。感じる違和感に自分の身体に異常がないか確認してみると私は目を疑った。あ、赤ちゃんになってる!!?うぉおい!!赤ちゃん!?ほわいっ!?
「あーーうー!(夢なら覚めてくれ〜)」
「まだ生まれて間もないのに起き上がろうとするなんて立派な子アマス」
「わちきらの娘だからだえ。下々民の人間とは違うんだえ」
ていうかこのブサイクが父親!救いようのない顔に笑った。心の中でだが。母親は美人なんだけど、語尾がなんだ?アマスって…。いや、それよりこれが父親となると私の顔は一体どんな風に仕上がっているのか。こんなブサイクに似たら私の人生は終わる!
しかし今の私には鏡を見るなんて芸当はできない。だって私多分今0歳だもん。17歳も若返っちゃったんだもん!若返るのはいいけどさぁ、何も0歳って!一人じゃ何もできないよ…。
「そろそろエレナは寝る時間だえ」
「そうアマスね」
私の母親らしき人とブサイクおやじがめちゃくちゃ豪華な部屋へ私を連れて行く。うわ、すっご!なんだこの宮殿みたいな部屋は!
「あーー!(何ここ?)」
「むふっ そうかえそうかえ 父上もエレナの事が大好きだえ」
なにを勘違いしている。ここが何なのか聞いたのに誰が貴様を好きと言った!!鏡見て出直してこいバカ野郎
「いい子はもう寝る時間アマス」
豪華なベッドへ寝かされて母親が私の頭を撫でる。さっき寝たのに、どうしてかとても眠くなってきた。
「いい夢を見るアマス、エレナ」
母親の優しい声を聞いて私の意識はそこで途絶えた。