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「おいネプチューン その伝説の悪魔の実ってのは一体どこにあるんだ?」
「?何を言っておる この中身がそうじゃもん」
「…生憎おれにはただの空っぽな箱にしか見えねェんだがなァ」
白ひげのその言葉にネプチューンもまた眉を寄せて木箱の中身に目をやる。
そして中身を見たネプチューンはこれでもかという程に目を見開いた。
「ない!き、昨日までは確かにあった筈の悪魔の実がなくなっているのじゃもん!」
「オイ 落ち着けネプチューン。色と形はどんなだ」
「あ、ああ…!確か水色で、りんごのような形をしていたのじゃもん」
ネプチューンが悪魔の実の特徴を口にした途端、木箱を見つめて唸っていたエースがハッとした表情で顔を上げた。
「水色で、りんごみてェな形…!おっさんそれ本当か!?」
「本当じゃもん。なんじゃ お主何か心当たりでもあるのか?」
「心辺りも何も、それ昨日食っちまったんだよ!!」
エースのその一言にその場にいた全員が動きを止めた。静まり返る入江。しかしそれも一瞬で、白ひげ海賊団の船員達は冗談だろうと耳を貸さなかった。
「エース隊長それはありえないですよ!隊長は既に能力者じゃないっすか」
「そうそう!悪魔の実は二つ食べると死んじまうしな。きっと隊長酔って記憶が曖昧なんですよ」
「また食いながら寝て変な夢でも見たかもしれねェしな!」
船員達の言葉にエースは言いづらそうに視線を落とした。
「おれじゃねェ……食ったのはエレナだ」
ピタリと船員達の声が止み、再び入江に沈黙が訪れた。
そしてーー
「「「……え、え…っえええええ〜〜〜!!?」」」
島が揺れそうな程の大絶叫が辺り一帯を包んだ。
そしてこの大絶叫の原因でもあるエレナはというと、まだ事態を把握できずにキョトンとした顔をしていて。
「エース その話に嘘はねェな?」
「オヤジ…!ああ 嘘じゃねェ。本当だ」
白ひげは頷いたエースの顔を見てから次にエレナを見た。
「あの…ええと、もしかしてわたくし」
まだ全てを理解できていないのか、しどろもどろになりながらエレナが言葉を繋ぐ。
「…ああ。昨日お前が食ったのは本来ならここにあるべきハズの悪魔の実だ」
それと同時にガンッ!と鈍器で殴られたような衝撃がエレナを襲う。
まさか自分が悪魔の実の能力者になるなど夢にも思わなかったのだろう。
放心状態のエレナは何度も謝ってくるエースの言葉も聞こえていないようで、虚空間を見つめたかと思えば今度はフッと意識を失った。
「…っエレナ!!」
気を失ってその場に倒れそうになるエレナを抱き留め、エースは急いでマルコを呼んだ。
「マルコ!エレナを診てやってくれ!」
「落ち着けエース。恐らくショックで一時的に気を失ってるだけだ 安静にしてやれば直ぐに目は覚める」
「本当か!?こうしちゃいられねェ マルコ!何かおれに出来る事あるか!?」
「大人しくエレナの目が覚めるのを待つんだよい。目が覚めたらまず一番に謝れ。それがお前のやるべき事だよい」
マルコの的確なアドバイスにコクッと頷いたエースはひとまずモビーディック号の医務室にエレナを運んだ。
マルコがソワソワと落ち着きのないエースと共にエレナの目覚めを待つ羽目になったのは言うまでもなく。
ーーかくして前世の記憶を持ちこの世に生を受けた天竜人・エレナは宴の席での些細な過ちで"海の秘宝"と呼ばれる伝説の悪魔の実の能力を体に宿す事になってしまったのであった。