001
「おい、何やってんだよウィル!そんなとこにいねェでお前もこっちこい!!」
「ししし!そうだぞウィル!早く来ないとウィルの分までおれが食っちまうからな!!」
「バカ、ルフィ!ウィルのやつただでさえ少食なんだからお前があいつの分まで食っちまったら骨と皮になるだろ!」
見渡す限り自然に囲まれた森の中で小さな影が四つ。ウィルと呼ばれた少年はサファイアブルーの双眸を少し離れた場所にいる三人に向けるとコクリと頷いて。
「ああ、今いく」
ーーーーーーーーーーー
「ほら、これお前の分な。ちゃんと食えよ?」
「これがおれの?エース、盛りすぎじゃないか…?」
「何言ってんだ、盛りすぎじゃねェよ!お前が食わなすぎるからだろ、ほら食え」
「…わかった。食べるから背中を叩くなエース」
大きな皿にドン!と乗せられた不格好な肉を眺めた後、ウィルが少しづつその肉を食していく。その様子を見ながらエースもやっと自分の皿にある肉に手をつけた。
「今日もおれの勝ちだったなルフィ」
「明日はおれが勝つからいいんだ!」
「いーやお前じゃおれには勝てねェよ」
「勝つぞ!おれは海賊王になるんだ!エースなんかに負けてられるか!っていてェ!!!何すんだよ!」
「お前が生意気な口きくからだ」
「まァでも海賊王の前にまずは海賊にならねェとな」
「ああ!それで海賊になって仲間をいっぱい集めて冒険するんだ!それでウィルをおれの仲間にする!」
ルフィが放ったその一言にエースが驚いた顔で引っ張っていたルフィの頬を離すとパチンッという音が辺りに響いた。サボは食べていた手を止めて口を半開きにしながら停止して。ウィルは少し驚いた様に瞠目した。
「……おれ?」
「ああ!一番最初の仲間だ!」
「ちょ、お前何言ってんだよ!バカ、ウィルはおれの仲間にするって決めてんだからな!」
「おれが先に言ったからウィルはおれの仲間になるんだ!そうだろウィル!!」
「ちげェな、順番なんて関係ねェ。ウィルはおれの仲間になるんだよ!な、ウィル!」
いいやおれが!いや、おれが!と言い合うエースとルフィを目の前にウィルは少しばかり首を傾げた。
「…仲間?おれが?」
「おい二人ともやめろよ、ウィルが困ってるだろ」
「大事な話なんだ!ここで決めとかねェとなんか嫌だ!!」
「俺も今決めねェと嫌だ」
「ハァ、あのなー何ムキになってんだよ。エースも。お前がルフィ相手にムキになるなんて珍しいな」
「それとこれとは話が別だ」
「そうだ!ウィルはおれの仲間になるんだ!」
「だからウィルはおれの仲間にーー」
「とりあえず落ち着いて。…別におれは逃げたりしないから」
また取っ組み合いを始めようとする二人を傍で見つめていたウィルが制する。ルフィとエースが渋々大人しくするとウィルが静かに口を開いた。
「じゃあ、お前達が海賊になった時におれを見つけられたらね」
「それならいいぞ!エースより先にウィルを見つければいいんだもんな!」
「その話乗った。これで正々堂々勝負だな?ルフィ。手加減しねェぞ」
「ししし!いいぞ!この勝負は負けねェ!!」
「サボ」
意気揚々と意気込むエースとルフィを宝石の様な瞳に映しながらウィルがサボ、と一言呼びかけた。
「ん?どうした」
「おれはお前たちが大切だ。これからも、誰よりも」
「どうしたんだよいきなり。おれもウィルとエースとルフィ全員大切だぞ?」
「ああ、そうだね。先の話になるかもしれないけどーーーー」
「ーーーー!!!!」
ゴクリ、とサボの喉が上下した。この歳にしてあまりにも真剣で揺るぎのない眼をしていたからというのもあるがーーーー
「?何の話してんだよ」
「コソコソ話してんじゃねーよ、おれにも話せ!」
「…コソコソなんて話してない。お前たちが大切だって、そう話してただけ」
一瞬驚いた顔をされたが次の瞬間には満面の笑みを浮かべたルフィとエース、それにサボも混ざってもみくちゃにされながらウィルが僅かに頬を緩ませた。
10年後、強く逞しく成長した彼らとの再会を願って。