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ドゴォン!!!
「え!!!」
「何だァ!!?」
「机……」
「な……何だ…ただの机かァ…」
アーロンパークの最上階。ルフィとアーロンがいる一室から派手な音を立てて机が落ちてきた。
戦況が見えない状況での突然の大きな物音にヨサクとジョニーがあからさまに動揺の色を見せる。
その後も机に続き本棚やら椅子やら様々な物が落ちて来る。ここからでは上がどんな状況なのか詳しくは分からないが、どうやら珍しくルフィが怒っているようだった。
ピリッとウィルの頬を掠める微弱な覇気がそれを物語っている。まだ周りを威圧できる程までの覇気ではない不安定なものではあるがやはり王たる資質がルフィには備わっているのだ。
「こりゃ相当激しい戦いだ」
「ウィルの兄貴!ルフィの兄貴大丈夫っすよね!?」
「ああ」
「ああって…!な、何を根拠に…?」
「愚問だな。あいつは先の未来で海賊王になる男だ そんな男がたかだかサメ如きに敗れる訳がない」
「は…はあ 確かに!確かにウィルの兄貴の言う通りっすね!!」
揺るがぬ瞳でそう言い切ったウィルのあまりにも堂々とした姿に納得させられたヨサクは一人うんうんと頷いていた。
そしてその数秒後、アーロンパークから何かが床を突き破る音が何重にも聞こえてきた。
「何だ!!!?」
「み…見ろ!!今の衝撃でアーロンパークが!!!」
「バカな!!崩れそうだ!!!」
「危険だ みんな離れろォ!!!」
崩壊するアーロンパークに村人達が急いでその場から避難する。そんな中、ナミはまだ建物の中にいるルフィが気がかりでその場から動けずにいた。
「ナミの姉貴!!急いで!!」
「でもまだルフィが中に!!!」
「ルフィならおれが何とかする。ナミ お前は安全な所に避難しろ」
「ウィル!!…うん ルフィをお願い!」
ウィルはナミのその言葉に一つ頷き、その場からフッと姿を消した。
ーーそして程なくしてアーロンパークが完全に崩壊した。
「アーロンパークが…崩れた…!!!」
「兄貴……!!」
「ウィルの兄貴が行ったから大丈夫だとは思うが…中で一体何が起きたんだ…!!!」
「…ルフィ…ウィル…!」
皆が固唾を飲んで崩壊したアーロンパークを見つめる中、中央の瓦礫が突然宙を舞った。強い風も吹いていないというのに瓦礫が宙を舞う様子に驚く者達の目に、今までアーロンと戦い続けていたルフィと金髪に青い眼を持つ美青年が映った。
泣いて喜ぶヨサクとジョニー。そして二人の姿にホッと安堵するナミ。
ルフィはスゥ…っと息を大きく吸うと大声を張り上げた。
「ナミ!!!」
「………?」
「お前はおれの仲間だ!!!!」
「………うん!!!」
ルフィのその言葉にナミの瞳からポロっと涙が零れ落ちる。
そんなナミの嬉し泣きにウィルもまた珍しく薄く笑みを浮かべた。
二人のその会話を皮切りに村人達が歓声の声を上げ、大いに喜びあっていたその時だった。
「そこまでだ貴様らァ!!!チッチッチッチッチ!!!」
「あいつは…!!」
「何という今日はラッキーデー!!!いやごくろう戦いの一部始終を見せてもらった まぐれとはいえ貴様らの様な名もない海賊に魚人どもが敗けようとは……はっ…!?」
そこに現れたのはつい数時間前ウィルのビンタを食らった大佐 ネズミだった。
叩かれた頬が尋常じゃなく腫れているものの、金目の物全て自分の懐に収まると思っていた為途中まで生き生きと喋っていたネズミだったが金髪に蒼目。一見恐ろしさを感じる程端正な顔立ちの男ーーウィルに目が行った途端一気に顔を青くさせ、反射的に打たれた頬にサッと手を当てた。