069
「そんなプライドもクソもねェてめェが一船の船長の器か!!?てめェに一体何ができる!!!」
「お前に勝てる」
アーロンの挑発に動じる事なくニッと笑ってそう言って見せたルフィに周りの士気が上がって行く。
「やっちまえルフィの兄貴ィィ!!!」
「………ったりめェだクソ野朗」
「もし死んだら殺してやる」
「援護は任せろ!!!」
周りの声援や声援とも取れぬ声を一身に受けながらルフィがアーロンと交戦する。
どうやらアーロンの歯は何度砕けようとも再生するようで、ルフィはサメの歯を自分の口の中に入れるとウィルを見て口の中に入ったキバを指差した。
「見ろウィル!おれもキバ!」
「……ああ そうだな」
「…!?いや"そうだな"じゃねェだろ!そろそろあのバカに何とか言ってやれよ 兄貴だろお前」
何とコメントすればいいのか分からず、静かに相槌を打ったウィルにすぐ側にいたゾロがすかさずツッコむ。
秘策があるのかと思えば一見ふざけているとも取れるルフィの行動。それを咎めるでもなくそのまま流そうとするウィルにゾロは思わず目を見張った。
常識人であるはずのウィルだが度々こう言った面も持ち合わせている為ゾロとしては流れ弾を食らった気分になる。
その間にもルフィとアーロンの戦闘は続いており、交戦を続けている中でとうとうルフィの脇腹にアーロンの歯が突き刺さってしまった。
「ぐあああああああ ウガァ!!!」
脇腹を噛まれながら負けじとルフィも噛み返す。ルフィの口の中に入っているキバがアーロンの肩に刺さり、双方お互いから手を離した。
「どうだ…!!お前の歯の味はァ!!!」
「………おれの歯だが…しょせん軟弱なてめェのアゴ……!いいかサメの歯ってのァ肉を喰いちぎる力があってこその…サメの歯だ!!!!」
ガブッとアーロンの歯がルフィの腕に突き刺さる。
「ウィ!!!」
「うわあ!!!兄貴の腕が喰いちぎられる!!!」
「ああああああああ!!!」
「……引くなよ ルフィ」
ボソッと、誰に言う訳でもなくウィルがそう呟く。アーロンの歯から逃れようとして引き退ればルフィの腕は喰いちぎられてしまう。
仲間の、特に船長であるルフィの戦いには手を出さないと決めていたウィルだったが弟が血を流し痛みに叫んでいる姿を見るのは気分の良いものではない。
しかしそんなウィルの声が届いたのかルフィは引き退るのではなく前に重心を倒した。
アーロンの歯がルフィの腕から離れる。
「お前の声が届いたのかもな」
壁に体を預けながらゾロがウィルを見上げてそう言った。
小さな声ではあったがどうやら隣にいたゾロにはウィルの声が聞こえていたようだった。
「いや 野生の勘だろう。ルフィは考えなしではあるが勘は鋭い」
「野生の勘ねェ…まァ聞こえてたにしろないにしろ結果勝ちゃァどうでもいいんだがよ」
壁に寄りかかり、腕を組みながら静かな佇まいでルフィとアーロンの方に目を向けるウィルを見上げる。
一縷の焦りも動揺も見られないウィルのその確固たる表情はルフィの勝利を確信しているようで、そんな副船長の信頼しきった表情を見てゾロもまた一つ笑みを浮かべるのだった。