01
「やぁ、君が最後かな?オレはトンパ よろしく」
一体何がどうなっているだろうか。確か自分は定食屋でステーキ定食を頼んだ。そして何故か既に出来上がっていたステーキを食べているといつの間にか私はこの場に立っていた。
訳のわからないまま受付から受け取った406番と書かれたプレートを手に持ち、その場に佇んでいると小太りの男が声を掛けて来た。
「君は新顔だね?」
「ああ、そうだ。なぜわかった?」
何をもっての新顔なのかはわからないが取り敢えず相槌を打つとトンパと名乗った男は続けた。
「君みたいな綺麗な顔の男は見たことがないからね 見たらまず忘れないさ」
「それはどうも」
「そうだ、君の名前を教えてもらっていいかな?オレ試験のベテランだからよかったら色々教えてあげるよ!」
トンパの放った”試験”という単語にレンは頭を捻らせた。ステーキ定食を食べに来ただけなのになぜ試験?そもそも試験とはなんの試験なのか。悩みはしたものの、レンは特に顔色を変えるでもなく口を開いた。
「おれはレン。で、おれに何を教えてくれるんだ?」
「まずはお近づきのしるしにこれでも飲みなよ さっき外で買って来たばかりだから冷えてるぜ!(チッ顔がいいからっていけ好かねェ野郎だぜ。この下剤入りジュースでも飲んでトイレに籠ってろ)」
受け取った缶ジュースを暫し見つめてからレンはトンパに視線をやった。
「お前、死にたいのか?」
「へ?」
先ほどとは打って変わってあまりにも冷たい色をしたレンの瞳にトンパは言いようもない寒気を感じてダラダラと冷や汗を流した。
「あれ?トンパさんまだその古くなったジュース持ってたの?」
声のする方を見ると私より幼い少年二人とサングラスをかけ、スーツを着た男が立っていた。
「おいおい、そんな腐ったジュースを人に渡すなよ キレられても文句言えねぇぞ?」
「私達はゴンに助けられたがもし気づかなければ危なかったな」
金髪の少年にそう言われて私は脂ぎった顔を青くするトンパを一瞥した。
「まぁ彼の魂胆が分かりやすかったからね。騙すなら人を選んだ方がいい おれは手加減が苦手なんだ」
どういう意味かわかるよな?と言いながらトンパの顔を横から覗き、缶ジュースの中身を頭からかけてやる。
「ケッざまあねぇなおっさん」
「自業自得だな。他人を陥れるようなことをするからこうなるんだ」
「トンパさん、これからは新しいジュース買っておかないとね!」
ジュースでびしょ濡れになったトンパは周りのあざ笑う目に悔しさを覚えながらもヘコヘコと私に頭を下げた。
地ベタに頭を擦り付けながら謝るトンパだがきっとこういう類の男は学習せずにまた同じ過ちを犯すのだろう。
まぁ、私の知ったことではないのだが。