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「それで、跡部さんは無事に連れてこれたの?丸井、仁王」
「おう!ばっちしだぜい!」
「部室の前で待っとるぜよ 入りんしゃいと言ったんじゃが部員じゃないから、と頑固でな」
「そうか…彼女らしいね。そういう所もまたいいんだけど」
「跡部?氷帝の跡部が来てんのか?」
「そーいやジャッカルは知らねぇのか。氷帝の跡部じゃなくて今日転校して来たあっちの跡部とは関係ねぇ跡部だよ。ま、早い話跡部違いだな」
「なるほどな。それでなんでここまで連れて来たんだ?」
「ニブちんじゃのうジャッカルは。マネージャーにする為に決まっとるじゃろ」
「えー!瑠衣先輩マネージャーになってくれるんスか!?」
「あったりめーだろい!なんせ幸村くんのご指名だしな!」
「ほう、跡部がマネージャーか。だかしかし幸村、あやつに務まるのか?」
「あれ、真田も跡部さんの事知ってたんだ。問題ないと思うよ、彼女前の学校でテニス部のマネージャーだったみたいだし」
「ふむ、そうか。ならば問題ないな」
「跡部さんが我が部のマネージャーですか。これは士気が上がりそうですね」
「俺のデータでは跡部がマネージャーになる確率、ざっと見積もって98.6%だ」
「それほぼもうやるって決まってるようなんもだろ…」
「細かいこと気にすんなよジャッカル!瑠衣はいい奴だからぜってーお前も気にいるぜぃ!」
「そうっスよ!瑠衣先輩優しいしほわほわしてていい匂いするんすよ!」
「幸村が言うぐらいだから別に変な奴だとは思ってねーよ。ブン太も赤也も懐いてるみたいだしな」
部室の前で待っていると言う瑠衣の話で盛り上がる部員達を見ながら幸村は穏やかな表情でふわりと笑った。
「さ、跡部さんを待たせるわけにもいかないし皆、行くよ」
その一言にぞろぞろと部室から出て行った部員達の後ろ姿を見ながら自分も後に続こうとすると仁王に肩を叩かれて幸村は後ろを振り向く。
「なんだい、仁王」
「タネ明かしはしないんか?瑠衣ちゃんが氷帝の跡部の妹だってのう」
「ふふ、今はね。それに知らない方が面白いことになりそうだから」
「おまんもいい性格しとるのう」
「仁王こそ知ってるくせにあの場で言わなかっただろう?共犯だよ」
「プリッ」
「ほら、もたもたしないで行くよ。来てもらっておいて待たせるのは申し訳ないしね」
「そうじゃの。ーー思ったんじゃが幸村、お前さん」
そう言って意味深に言葉を切った仁王に幸村はスッと目を細めながらその瞳を見つめる。
「なにかな」
「いや、なんでもなか」
いつもの飄々とした仁王に戻ってそう言う彼に幸村は深く問い詰めることもなくそう、と一言言うと部室を出て行った。
その背中を見つめながら仁王は面白くなって来そうな予感を胸に幸村の後を追った。