09
「つかぬ事を聞くけど、君たち私が怖くないの?」
浮かんだ疑問をそのまま彼らにぶつける。すると大輝がバシッと私の背中を思い切り叩いて笑い始めた。
「バーカ、お前が怖いわけねーだろ。むしろ今のすごかったぜ!な、テツ!」
「はい。あの強烈な右ストレート、惚れ惚れしました」
「惚れ惚れ…?」
「な!テツもこう言ってるしそもそもお前を怖いなんて思った事ねーよ」
「青峰の言う通りだ。怖いなんて思うはずがない。お前は俺達バスケ部の大切な仲間だからね」
そう言って赤司はポンッと私の頭に手を置いた。赤司の綺麗な顔が僅かに綻ぶ。きっとこれは神様からの贈り物なのだろう。でなければ説明がつかない。こんなにもたくさんの友達に囲まれていい友人を持って。
「そう…ありがとう」
自分の表情筋の限り笑ってみせると全員が目を瞬かせて固まった。笑ったつもりだったが変な顔だったのかと不安になる。
「…は〜梨花っちそれ反則」
「わかるよきーちゃん、私も今の梨花ちゃんは反則だったと思う」
「奇遇っスね桃っち!」
「梨花ちんかわい〜マシュマロみたい」
「あいつのどこをどう見たらマシュマロなのだよ」
「ん〜全部。ふわふわしてて柔らかそう」
「理解できんな」
「緑間も素直に可愛いの一言ぐらい言ったらどうだ?」
「なっ……!?そ、そういうお前はどうなのだよ赤司!」
「勿論可愛いと思っているよ。事実彼女は確か学園随一の美貌だと聞いたことがある」
それを聞いて私の体は硬直した。”学園随一の美貌”…?”ブスの中でも指折りのブス”なら日常茶飯事に言われ慣れて来ているが、それが学園随一の美貌だと言われる日が来るだなんて世界は何が起こるかわからないものだ。
「てかさっきの梨花ちんすげぇかっこ良かったー。強い梨花ちんも好き」
「ありがとう敦。私もそう言ってくれる敦が好きだよ」
「ん。梨花ちんギュー」
言いながら敦が少し屈んで言葉通り私に抱きついて来た。予想外の行動に驚きはするも、私は顔の横にある子供みたいな彼の頭を撫でてやる。
「あーずるいっスよ紫原っち!俺も梨花っちとギューしたい!」
「だめー。梨花ちんは俺のだし。黄瀬ちんになんてあげねーから」
「始まった、きーちゃんとムッくんの梨花ちゃん争い」
「毎回見てて呆れるのだよ」
「ふん、あいつらが騒ごうが梨花は将来俺の嫁になるってのにな」
「いえ、それは世界が滅んでもないと思います青峰君。それだけはあり得ないです」
「そうそう、それだけはない!梨花ちゃんが大ちゃんのお嫁さんなんて絶対ないわよ」
「お前らひどくね?どれだけ俺のこと貶したいんだよ」
「まぁ、俺も梨花が青峰の嫁になる事はないと思うよ。俺がさせないしね」
有無を言わせない赤司の笑顔に梨花と紫原、黄瀬以外の人間の顔が引き攣った。