01
朝起きたら、超絶美少女になっていた。
「んー……朝か」
朝。いつも通りの時間に起きて鏡を見ないまま手ぐしで髪をとかし制服を着て登校する。世間一般で私はブスと呼ばれる部類の女子であり、そこまで酷くはないが軽いイジメも受けている。そんな私は鏡を見ながら身だしなみを整えようという概念すらなくなっていた。どうせ私なんか誰も見ていないし、私自身自分の身だしなみというものに興味がない。
そんな日常が180度変わるなんて誰が考えただろうか。
ザワザワ
「(なんだ?そんなにブサイクが珍しいか。やはり容姿で人を見下す人は好きになれない)」
ブサイクが通った!ブスは道の端歩け!などと言われ慣れてきてこのかた、周りの生徒たちからヒソヒソといつも以上に噂されているのを見ながらスゥと瞳を細めた。話の内容は聞こえないにせよ、私を見ながらコソコソと話す内容など決まっている。どうせなら聞こえるように話しても私はなにも思わないし慣れているのに。
教室に入ると私は何か違和感を感じた。
「(知らない人がいる。それも、一人や二人じゃない。どういうこと?)」
クラスで見たことのない人が半数以上いたからだ。残りの半数は見知ったいつものクラスメイトだったがその他は見たこともない生徒。話せる友達など一人もいない私は疑問に思いながらも席に着いた。そして事件は起こった。
「梨花っちおはようッス!」
「………」
「あれ、なんで無視するんスか!ひどいっスよ梨花っち〜!!」
私の机まで来て満面のキラキラスマイルを見せる金髪のイケメンに私は目を見開いた。なんだ、どういうことだ?まるで私の知り合いみたいなその口ぶりは。私は君みたいなイケメンな友達はいない。それどころか私は友達など一人もいないのだ。
「金髪の君、もしかして私に言ってる?」
「?当たり前じゃないっスか!っていうか金髪の君って何!!?」
「ああ…ごめん、名前をど忘れしちゃってね。なんだっけ?」
「ひど!!もー涼太!黄瀬涼太ッス!これでも梨花っちとは結構長い付き合いなんスよ〜?」
「ああ、黄瀬ね。わかった。とりあえず席戻って。考えたいことがあるんだ」
相変わらずクールな梨花っちもかっこいいッス!と言って席に戻っていた黄瀬を見ながら私は冷静に分析をし始めた。クラスの半数が知らない生徒で、更にその中に私の友達らしき人物もいる。どういうことだと頭を捻らせているうちに時間は過ぎ、早くも昼休みを迎えていた。
「(黄瀬涼太…私の名前を知っていて更にあの友達みたいな口ぶり…どういうこと?新手の嫌がらせの可能性もーー)」
「梨花っち!なーにボーッとしてるんスか!行くッスよ」
「ちょっ!行くってどこに?」
突然にょきっと現れた黄瀬に驚きつつ、お弁当らしきものを持っている彼を見ると不思議そうな顔をされた。
「梨花っち今日どうしたんスか?風邪?」
「!?な、なにするの」
「なにって、熱があるか確かめただけッスよ。ちょっと今朝もおかしかったし」
コツンとおでことおでこをくっつけてきた黄瀬にぎょっとする。おかしいのは私じゃなくあんただよと言いたかったが本当に心配そうな顔をされて私は押し黙った。
「大丈夫だよ。心配してくれてありがとう」
「ならいーっスけど体調悪かったら言って!俺、梨花っちの為ならたとえ火の中水の中!何でもするッスよ!」
「う、うん?」
誰かに、しかもよりによってイケメンにこんなことを言われるなど夢にも思ってなかった私は驚きでいっぱいだった。
どこに行くのかはわからないが黄瀬に連れられて廊下に出ると生徒たちの視線が私と黄瀬に集中する。まぁ誰が見てもブスと言える私と誰が見てもイケメンと言える黄瀬が一緒に歩いていればこうなるのは分かりきっていたことだ。
しばらく廊下を歩いていると途中にトイレが見えてきて、私は黄瀬に一言断りを入れてトイレへ向かった。