02



「うわー!もうやっと帰れるっスー!」

「誰のせいだと思ってんの」
「誰のせいだと思ってんだ」



今日はテスト前で部活が休み。
星弥ちんと2人で勉強、のはずだった。
なのに黄瀬ちんが”俺、今回の範囲やばいんスよねー、お願い!一緒に勉強しよう!”って言ってきた。
最初は渋ってた星弥ちんのこともちゃっかりジュースで買収してしまった。

で、勉強するはいいが黄瀬ちんのファンが押しかけてくるせいで勉強がはかどらなくてこんな遅い時間になってしまった。
遅いといってもまだ6時過ぎ頃だが。
この時間帯は黄昏時とか逢魔が時とか呼ばれていたはず。
つまり、人ならざる者が行き来する時間帯だ。
俺はあの事件以来暗闇が怖くなった。
俺だっていかに身長がデカくてもまだ子供なのだ。
悶々と考えてたら黄瀬ちんが急に口を開いた。



「ねぇ、知ってるっスか?この街で最近有名な噂」

「噂?」

「何それー?」

「テケテケの噂っスよ!」



テケテケ、どこかで聞いたことがあるような気がする。
確か一時期クラスで話題になっていた。



「あれだろ?上半身しかなくて腕だけで走って追っかけてくる女のことだろ?」

「そうっス!それが最近この街に出たみたいなんスよねー」

「でもそーゆーのって都市伝説なんじゃないのー?」

「まー、そーっスけど……」

「いるんじゃない?実際にさー」



めずらしい。
星弥ちんが幽霊の話を自分から肯定するなんて。
何時もならこの手の会話には絶対に参加しないというのに。



「なんでそう思うんスか?」

「人の言葉の力はすごいよ」

「?」



そう言った星弥ちんの顔は少し泣きそうだった 。
というか黄瀬ちんは小首かしげているが全くもって可愛くない。
ファンは卒倒するのだろうが、俺らはいらない。



「言葉はそれ一つで人を救えもするけど殺せもする、だから人の言葉はたまに現実には無いものを生み出したりするんだってさ」

「それが都市伝説?」

「そう、たとえばまっ暗闇を見たとするじゃん?そしたら人は恐怖からその奥に人ではないものが、自分にとって怖いものがいるんじゃないかって考えちゃうんだよ」

「うん」

「でもその気持ちは純粋な恐怖じゃなくて好奇心や期待も入り交じってる、暗闇の奥には自分の見たこともないものがいるんじゃないか、とかね」

「そーゆー期待とかがお化けを呼ぶってこと?」

「そう、だから一度恐怖に取りつかれた人はけっこう頻繁に幽霊を見ちゃうんだな」



星弥ちんの話し方は誰かに聞いたものをそのまま話しているようだった。
黄瀬ちん全然理解できてなさげだ。



「えっと、どういうことっスか?」

「つまりねー、そーゆー怖いことばっか話してたらそれが現実にはなるよーって話」

「!?!」

「あとねー、そうやってビビったり、幽霊に会ったことがある人って危ないらしーよー」

「え!?そうなんスか!?」

「ねー、星弥ちん」

「んー」



だめだ、もう星弥ちんは黄瀬ちんに買ってもらったおしるこメロンソーダ飲むのに必死だ。
ところでおしるこメロンソーダとは美味しいのだろうか。
黄瀬ちんの方を見ると何故だか顔が真っ青だった。



「どうしたの、黄瀬ちん?腹痛い?拾い食いでもしたの?ペッしなさいペッ!」

「紫っち、ふざけてる場合じゃないっスよ……」

「はぁ?どーしたのさ?」

「会ったことがある人……それを怖がってる人ってことは、緑間っちが危ないんスよ!!」





2014.12.11 完成
2016.06.17 加筆修正


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