01



黄瀬目線


着けられている。
そう感じるようになったのは6日程前から。
正確には着けられている、というよりも視線を感じるだけ。

そう”だけ”なのだ。
あたりを見回してもそれらしい人はいない。
しかも部屋の中までその視線は着いてくる。
まだ外だけなら、職業が職業なだけに納得はできた、しかし部屋の中までとなると話は別だ。
幽霊的なアレなのだろうか。



「はぁ………なんなんスか、もう」



誰にも聞こえない程度の声で呟いた。
最近はついていない。
何もない所で転んで怪我したり、それのせいでバスケできなかったり。
上から植木鉢が落ちてきたこともあった。
あれは本気で焦った、近くにいた青峰っちが俺を突き飛ばしてくれなかったら今頃病院のベッドの上だっただろう。



〜間もなく三番線に電車がまいります〜



ふとまた視線を感じた。違う、”また”じゃない。
今感じている視線はいままでのものより異様だった。
明確な殺意、というものを感じた。
背筋が凍りつく、妬み嫉みを向けられることはあってもこんなにはっきりとした憎悪を向けられたのは初めてだ。
逃げたいのに足が竦んで逃げられない。
今まで殺意を向けられた事なんて無かった俺は完全に動けなくなってしまった。

嫌な汗が背中を伝う。


────ドンッ


不意に背中を押された。
目の前にはホームに入ってくる電車、うるさいくらいの警笛。
ああ、死ぬ間際ってすべてがスローモーションになるんだ。
俺の立っていた位置に目を向けても誰もいない。



「青峰っちにまだ一回も勝ててないや」



俺、死ぬのかな。
バスケもっとしたかったな。
俺の右腕が無意識に救いを求めるように伸びる。



「なに諦めてんの、バッカじゃねぇーの」



どこか遠くでそう言う声と、右腕に暖かい感触がした。





2014.11.13 完成
2016.06.16 加筆修正


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