鬼事 01




たんたん、とリノリウムの床を上履きを履いた足で数度飛び跳ねる。
よし、準備はOK。

「総司。準備は?」
「こっちもOK。いつでもどうぞ?」

いつも通り余裕たっぷりに言う幼馴染と一緒ににかっと笑いあい、私たちは後ろを振り返った。
後ろ―職員室に面した廊下を。
…そろそろ気づくかな。
いや、何度も仕掛けているのだからすぐに気づくはずだ。
しかしいつ来るかはまだわからない。こんなことを考えているもうこの瞬間に彼は出てくるかもしれないし、もう2秒あとかもしれない。
いつ来るかいつ来るか、私はどきどきしながら待つ。
現実には1秒でも、感覚的には長い長い時間を待っているようだった。
早く早く。
わくわくしながら私は待つ。
そんな私の思いが伝わったのか、次の瞬間、すさまじい音を立てながら職員室の扉が壊れんばかりの勢いで開けられた。

「総司!!白川!!てめぇらまた俺の机から俺の句集盗みやがったな!!???」

出てきたのはもちろん私の待ち人、「鬼の担任」こと土方先生である。
その二つ名にふさわしい鬼のような形相で、先生は私たちにせまってきた。

「今日という今日は許さねぇ!!!」
「うわっと、総司パス」
「まかせて」

危うく捕まりそうになり、私は持ってた句集を総司に放り投げ、土方先生の手をすり抜けて総司とともに逃げる。

「てめぇっ!」
「鬼さんこちら、手のなるほうへ?」


さぁ、鬼ごっこをはじめましょう?
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