過去拍手【土方】


「何をお願いしたんですか?」

初詣の帰り道。
歩みを速め、私は彼の前にまわって彼の顔を伺い見た。

「何って…おめぇ、言ったらご利益なくなるだろうが」

いきなり何を言い出すんだか。そう言いたげないつもの呆れた調子で歳三さんが言う。
だって気になるんですもん。と言うと、今度は溜息をつかれた。
え、なんですか。その仕方ねえ奴みたいな溜息。

「なんだっていいだろ」

ぶすっとした声音で返された言葉に私はちょっとむくれた。
そんな無愛想にしなくてもいいじゃない。
…そうだ!
少しつれない相方の態度に、私はちょっとしたイタズラを思いついた。
にまにま顔で彼に近づき、言う。

「えー。…言えないことなんですか?」
「ばっ、…そんなんじゃねぇよ!」

その途端、彼は焦った顔をした。
お、慌ててる慌ててる。彼の慌てる姿を見て溜飲を下げた私は、にんまりとした。
大声を出しそうになったところで、まわりにたくさん人が歩いていることを思い出したらしい。
踏みとどまった最後の言葉は、隣を歩く私に届くくらいの大きさに調整された。
そのままの大きさで、彼は少しばつが悪そうに「だいたいそう言うおめぇはどうなんだよ」と言った。
「私?」聞き返してくるとは思っていなかった私は、きょとんとした。
意外。歳三さんが私のこと聞いてくるなんて。
普段はちっともこちらのことを気にしてないフリをしてくる彼が、直接にこちらのことを聞いてきたことを嬉しく思いながら、私はどう答えようか考えた。

「えー…どうなんでしょう?」

小首を傾げてみる。
すると彼は一つ溜息をつき、また呆れた顔をした。

「ほれみろ。自分も言えねぇじゃねぇか」

ふいっと踵を返し、私の前を歩く。
あら、機嫌そこねたかな。
私はそっと彼の手に自分の手を伸ばし、握った。
彼が驚いたように振り返る。
その肩に手をのせ、私はその耳に囁いた。

「 」

目を見開いた彼はすぐに顔を私から背け、握った手をさらに握りこむと、ずんずん先を進み始めた。

「俺も」

しばらくして呟かれた言葉は相変わらず素直じゃなかったけど、よしとしよう。

今年もどうぞよろしく。



(ずっと一緒にいられますように)
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