いつもポアロに来て本を読んだり梓さんと話すためだけに来る女がいる。
眼鏡をかけて、黒い髪をサイドアップにしている育ちのよさそうな女。
いかにも平和的で、きっと自分とは違う陽のあたる場所で生きてきたんだろう。
「ナギさんのお店もコーヒー美味しいですよね!また行くからサービスしてください!」
「ありがとう、ケーキサービスするかも」
「安室さんも今度一緒に行きません?ナギさんは喫茶店でバイトしてるんですよ!」
「へぇ、そんなんですか。是非今度行かせてください」
「名刺、渡しとく。私明後日とかいるし!」
ニコニコしながら渡された名刺には本来の職場からそう遠くはない地図が記されていた。
仕事が終わっていれば梓さんと行ってみるか…
ここでの関係性を円滑に進めるためにもこういう関わりは必要だろう。
「じゃあ明後日伺おうかな」
「はい!お待ちしてまーす」
眼鏡の奥で無邪気に細められた瞳を羨ましく思う。
それからまた梓さんと話し始めた女に視線をやると視線に気付いた様で、ふんわりと微笑まれた。