仕事終わりにナギという女が働いているという喫茶店にやってきた。
今日この時間に仕事が終わったのは奇跡だ。
自分でも信じられないぐらいに。
約束だからと足を運んでみたが悪くなさそうだ。
中々に歴史を重ねてきた面構えは嫌いじゃない。
木製の扉を開けるとナギさんの姿があった。
「あら、安室さん本当に来た」
「はい。梓さんは予定があって急遽来れなくなってしまったので僕1人で」
「あら…こちらへ」
客はまだいないようだ。
ニコニコしながらカウンターの隅へ案内された。
赤い夕日がカウンターを照らしていた。
こういう時には物思いにふけてしまう。
日本を守るということ、亡くなった友、それから
「コーヒーで良かった?」
「…あぁ。ありがとう」
「探偵って大変なの?」
「そう見えたかな」
ニコニコとこちらを見ながら微笑まれる。
悪い気はしない。
ただ何か見透かされているようで変な気分だ。
「ここからだと夕日が綺麗に見える」
「ああ、」
「夕日って色んな事を思い出させてくれる」
「…」
「安室さんも思い出すでしょう?」
二人で夕日を見ていると時が止まったような気がした。
聖母みたいな顔で彼女がふと俺を見た。
ケーキ作りと読書が趣味だと言っていた。
そんな穏やかな女にも俺のような暗い過去があるのだろうか。
仕事に暇が出来て、気が向いたら調べてみようか。