それから街を散策していると西日が差してくるようになった。
小物屋さんに寄ったりしていると時間はあっという間に過ぎてしまうのだ。
身だしなみ整える系の何かを買おうかと思っていたけど結局決まらなかった。
それから自炊するための食材を何個か買ってもらった。
今日は鯉登が全部払ってくれると言っていた。
持つべきものは鯉登だ。
「夕食は特別に食べて遅くなってもいいと言われている。何か食べたいものはあるか?」
「洋食!絶対に洋食!」
「勅使河原の時代は洋食が主だと言っていたからな。いいだろう行こう」
鯉登が歩いていくのでそれに続く。
随分とこの街を知っているんだな。
まあ管轄内なら当然か…
洋食屋さんに着いて、案内されるのに従う。
何にするか迷う〜
「迷っているならまた私のと半分にするか?」
「いいの?!」
「構わない」
「じゃお言葉に甘えて〜」
いくらか悩んだが、ここはオムライスとカレーにした。
あとワインも飲みたいと言うと賛同してくれた。
「勅使河原は元の時代に帰りたいと思ったりするのか?」
「思うけど〜帰れないし、もうこの状況を楽しむしかなくね?!ってなってる」
「……強いな」
「両親も死んでるし思い残すのは友達ぐらいだけど、私の友達ならそっちでも頑張れよ!って絶対言ってくれるから」
「ご両親を亡くされていたのか……」
「事故でね〜まあ事故だから仕方ないよね。当時はハチャメチャ落ち込んで爆泣きだったけど」
私が高校生の時、両親共々事故で一瞬にして帰らぬ人となった。
最初は訳も分からず葬式をして、日常生活を送っていたが、半年経った頃急に両親の死を実感するようになった。
あの頃の私は本当に無気力で、何も出来ず学校にも行けずこのまま私も死ぬか……となっていた。
それを救ってくれたのが友達で、彼女達には感謝してもしきれないのだ。
鯉登の眉毛が垂れ下がっててかわいくなってる。
「とにかく私は悲しみを乗り越えて、ギャルとして再起したって訳」
「そうだったのか……苦労してたんだな」
「私が苦労してないみたいに言わないでよ。この時代に来ただけでも相当な苦労なんだからね」
「勅使河原の話で時々出てくるぎゃる?というのはなんなんだ」
「ギャルは、自分の信じた道を信じて進む人のこと。周りに誹謗中傷されたり文句とか悪口言われたって気にしない!私は行くぞ!ってこと」
「……なるほど」
「でも私今全然ギャルメイク出来てないし、ギャルなのか?って感じなんだけど」
化粧しないで外に出るのホントに嫌だけど、軍帽が隠してくれるからまだ外に行けてる感はある。
「今はつるみちゅにお世話になってるけど、私の道と違うな?って思ったら何としてでもここを出るし、私は私の道を行くから」
「……私の道は鶴見中尉殿の道だからな、そうならない事を願おう」
「ふーん……あ、料理来たよ!」
オムライス!
オムライスの歌を歌うと鯉登も肩を揺らしてリズムに乗ってくれた。
かわいいな。
ワインがうまい!
それにしても久しぶりに酒を飲んだから回るのが早い。
でも飲むぞ!
オムとカレーを交換して食べ終わった頃にはボトルが1本空いていた。
鯉登は顔色を変えずに味の感想を述べていた。
もしかして鯉登って酒強い?
九州の人って酒強いけど明治時代からなんだ……
遺伝子から酒が強いってこと?
店を出るともう完全に日が沈んでいた。
「そろそろ帰るか」
「ワインあと一本空けたらもっと楽しくなれんのにな……」
「薩摩のうまい酒を用意しといてやる。来月私の送別会をしてくれ」
「送別会しなきゃだね……寂しくなるな〜!」
あー寂しい!
こんな面白い男がいなくなったら日々の煌めきが失われてしまう!
「……私に行って欲しくないか」
「行って欲しくないよ!今のところ鯉登ほどかわいくて面白い男いないし」
「かわいい?!」
「かわいいじゃん!弄るとぷりぷり怒るし褒めると犬みたいに喜ぶし今も荷物持ってくれてるし!最初高圧的だったのはブチ切れたけど、軍人とかわいいのギャップにやられる女子は多いと思うよ」
「勅使河原もやられたか?!」
「いやまだやられてないけど」
「やられてないのか……」
眉毛が下がる所もかわいい。
肩も下がってるかわいい。
こんなかわいい男が将来戦争に行ってしまうのが悲しい。
「私のタイプがかわいい男だからな〜これで命張って助けてくれたりしたらもうイチコロかな〜」
「私は勅使河原のためなら命を張るが」
「おぉ!今のはカッコイイ!これならどんな女でも寄ってくる…これで鯉登が好きなタイプの女もいけるよ!」
「あ、あぁ……そうか……」
鯉登を褒めて持ち上げているうちに兵舎に着いた。
鯉登から荷物受け取りバイバイした。
手を振ると強めに振り返してくれた。
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